ひへいこう

おとぎ話みたいのひへいこうのネタバレレビュー・内容・結末

おとぎ話みたい(2014年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

こんな映画観たことない!こんな映画観たかった!

趣里さん演ずるしほは今まで僕が聴いたことのない思春期の女の子の心の独白をこれでもかと言うほど続けます。これが男性が書いたものであればもっとわかりやすいご都合主義な非現実少女になっていたでしょう。しかし、描いたのは山戸結希監督という女性です。こんなこと考えてる子がいたのか!?って(違ったらごめんなさい)

この映画では田舎と東京、子供と大人という2つの対立軸が描かれています。

しほはバレエダンサーを志しており、こんな田舎では誰もそんな自分の気持ちを理解してくれるものはいないだろう、と思っていました。そこに現れたのが新見先生。自分の踊りを観て、それを理解してくれた、ただその一点だけですべてが救われた気になった。自分を理解してくれる人に出会えたという喜び、そのことだけで恋に落ちる、、、わかる、わかるよ、これは男女共通なのかなと思います。

けれど、新見先生は「君は子供じゃないか」とすげない返事。お前、なんだよ、お前もほんとうは救われた気持ちになったろ、なんでしほの純粋な気持ちに応えないんだよ、バカかよって思う訳で。ぎゃくにお前すげーなと思う訳で。

しほ自身も大人にならないと踊ることは出来ないということは自覚しており、二人の恋模様は、そして、しほは上京し踊ることを続けるのか、どうなのか?って話です。

しほが新見先生に投げ掛ける言葉の数々は未成熟など少女だから口に出すことの出来るものだったのではないかと思います。「大人」になってはこんなにどストレートに言えないのではないかと。

これに対する対比としてのラストシーンにおけるダンス、この踊りこそがあなたへの言葉なのよ、というセリフ(すみません、原文ママではありません)が、ああ、この娘は大人になることを選んだのだなと個人的に感じた次第です。

劇中にはしほの先輩役としてバンド「おとぎ話」のメンバーとその楽曲の数々が雰囲気を盛り立てます。まるでギリシャ悲劇におけるコロスのようにストーリーを支える演出がとてもにくい。この映画を観た後に、同じく山戸結希監督が手掛けたおとぎ話のCOSMOSのMVを観ると上を向いて歩くことになります。

趣里さんのラストシーンのダンスは独白も相まってこの上なく美しく、スクリーンを見つめる両眼からはただただ温かい液体が次々と流れるばかりでした。そして、ひとりしほのその後を見つめる新見先生と、その後に流れる有り得たかもしれない2人の姿も胸がいっぱいになりました。

大変主観的で申し訳ないのですが、これが僕がの映画を観た体験です。何度も観返したら、また新たな発見や感じることがあるように思います。何度でも観たい映画だなと思いました。

※ ベルブ永山にて2018/05/05に開かれたTAMA映画フォーラム特別上映会「映画の中の私たち」で観ての感想です。
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