スローモーション男

アドベンチャーランドへようこそのスローモーション男のレビュー・感想・評価

4.8
 めっちゃ良かった!ラストまでは…。

 1987年、大学院の学費を稼ぐために地方の遊園地でバイトすることになったジェイムズ。そこで友達ができて、頼れる先輩もできて、そして好きな人ができて…。甘酸っぱい一夏の青春。

 これはね、みんなの心の中に誰もが持っていて誰もが憧れた妄想を映画にしたとのなのです。
 童貞のジェイムズが頑張って女の子にモテようとする。そこにミステリアスな女の子エムと出会い、恋に落ちる。それなのにエムは整備士で既婚者のコンネルと不倫関係…。もうこのどうしようもなさ…。その辛すぎる人生の縮図が見事に描かれる。

 アドベンチャーランドで働いている人たちはみんな大人になりきれてない。毎晩マリファナを吸って欲望に従って、今の自分を変えようともせずに愚痴を吐いている。みんな現状に満足してないのに、楽しいと思い込んでる。

 ジェイムズとエムももっと素直になればいいのに、お互い自分を隠して否定しあう。でも、現実世界でもみんなおなじなんですよ。
 僕も失恋したときは相手のことを攻めてた。社交的で明るい一面に嫉妬してた。自分の持ってないものを持っていたのが嫌で仕方なかった。だからこの映画はぶっ刺さりました。
 ジェイムズは夢破れたけど、エムを追ってニューヨークに行く。2人はやっと結ばれる。ですが、こんな幸せな結末は現実ではほとんど起きない…。別れたらそれっきり。再会することもできない。このラストはロマンチックすぎると思いましたが、そのあり得ない可能性があるのが映画なんです。映画は現実で出来なかったことを可能にしてくれる。これは誰もが経験し、経験し損なった青春を補完してくれる映画だと思います。