かたゆき

オンリー・ゴッドのかたゆきのレビュー・感想・評価

オンリー・ゴッド(2013年製作の映画)
2.5
タイ、バンコクでキックボクシングのジムを経営しながら、陰で麻薬取引にも関わっているジュリアン。
ある日、彼の兄が不可解な変死体となって発見される。
14歳の売春婦を犯した挙句嬲り殺したその死体の隣で、変わり果てた姿で横たわっていたというのだ。
激怒した彼は真相を探るべく欲望渦巻くバンコクの裏社会へと繰り出してゆく。
浮かび上がってきたのは、独自の歪んだ正義感を持ち強烈な力で裏社会を牛耳るある一人の警察官の存在だった――。
事件の真相を知って、「兄貴は自業自得だ」と身を引こうとするジュリアンだったが、アメリカから自己愛の権化のような彼らの母親がやって来たことから事態はますますいびつに歪んでいく……。

デビュー以来、独自の世界観を圧倒的な暴力描写で表現してきたレフン監督が新たに創出したのは、そんないかにも彼らしい濃密なバイオレンス・ノワール作品でした。
確かにこの監督にしか表現しえないであろう、唯一無二の独自の世界観を構築した作品であることは認めます。
無駄を削ぎ落としたシンプルなストーリー、哲学的なテーマ性、全編に横溢するピリピリとひりつくような緊張感、倫理観を踏み外しまくったあくの強い登場人物たち、吐き気を催すほどに繰り返されるグロ痛い暴力描写(特に母親の腹を切り裂き、自分がかつて居た子宮に手を差し入れるシーンは良くも悪くも強烈!笑)。

とはいえ、最後まで淡々と展開される、ともすれば冗長とも批判されかねないこの独自の作風なのですが、正直に言わせてもらえば、僕の感性とはまったく合わなかったですね。
レフン監督の過去作もひととおり観たのだけど、その良さがさっぱり分からなかった自分としては、その世界をますます深化させたような本作もやっぱり理解できませんでした。

ただ、彼のその映画監督としての傑出した才能は――好き嫌いはべつにして――充分に認めざるをえないのよね~。
なんで、「この監督の映画はもういいや」と簡単に切り捨てられないのが辛いところ。
かつて同じように嫌いだったデビット・リンチ監督が急に『マルホランド・ドライブ』という傑作を撮ったことを思うと、どうやらこれからもチェックしていかなければならないようです(面倒臭いですけどッ笑)。

という訳でレフン監督、そんな僕のくだらない感性など力ずくで捻じ伏せるような凄い作品をいつか撮ってね☆
かたゆき

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