ビル・カニンガム。
お金や名誉に振り回されず、権力に迎合しない人。
謙虚で嘘がなく、老いてなお自分の信じる道をすすむ人。
享年87歳。
『最高のファッションショーは常にストリートにある』と、50年以上ストリートでファッションスナップを撮り続けた。
そんな彼に撮ってもらう事が、いつのまにかファッショニスタにとってのステイタスに。
群れるパパラッチに脇目もふらず通り過ぎるアナ・ウィンターが、青い作業着のビルを見つけた瞬間、一瞬だけ立ち止まり彼に向かってポーズを取る姿にはゾクゾクした。
お膳立てされたものを嫌い、自分の琴線に触れるスタイルを見出した瞬間しかシャッターを切らない。
たとえ相手がセレブでも、絶対に義理でカメラを向けたりはしない。
「本当に好きなことをしたかったら、お金は受け取らない。お金に触れたら最後、決して自由にはできないから」
自分の感性に影響を与えようとしてくるものからは徹底的に距離を置くビル。
極端に控えめで、社交的とは言えなかった彼だけど、いつもニコニコ素敵な笑顔が印象的だったなあ。
社会に迎合し、すりよって生きるのではなく、凛と自分の足で立つ人間は美しい。
どんな仕事も自分の哲学を大事にしながら働くことは難しいからこそ、しがらみなく、自由に愛するファッションに向き合う姿にみんな憧れるのだと思う。
彼の生き方は、思いやりと謙虚さにあふれた人生を送りながら同時に成功することができる、というメッセージを感じさせてくれます。
自分のスタイルやビジョンを見失ったり、生き方に迷った時、そっと原点に戻してくれる作品。