Tラモーン

エンド・オブ・ウォッチのTラモーンのレビュー・感想・評価

エンド・オブ・ウォッチ(2012年製作の映画)
4.2
『トレーニング・デイ』に続けてロス市警アクション!


ロサンゼルス市警のブライアン(ジェイク・ギレンホール)とマイク(マイケル・ペーニャ)はコンビを組む制服警官。全米一の犯罪多発地域を担当する2人は、ときには悪ふざけをしたり、パトカー内ではゲラゲラとバカ話をしながらも日夜正義感を燃やして職務に就いていた。パトロール中に偶然にもメキシコ麻薬カルテルの人身売買拠点を発見した彼らは組織の恨みを買い命を狙われる。


めちゃくちゃ緊張感のある映像がたまらない。ジェイク・ギレンホール演じるブライアンが勤務中に常にカメラを回しているという設定をフルに活かして、全編に渡りドキュメンタリータッチな映像になっていてとても臨場感がある。おまけにロサンゼルス市警が撮影に全面協力したとのことでリアリティもバッチリ。

冒頭、ブライアンの自己紹介がてらの警察官としてのプライドや考え方などの語りをバックに、容疑者の車を追うパトカーのドライブレコーダーの映像で始まるあたりから臨場感が凄い。カーチェイスとなり、出てきた男がいきなりこちらに向かって発砲、銃撃戦となり犯人が射殺されるまでが生々しく映し出される。
黒人ギャング、メキシカンギャングの麻薬密売の縄張り争いにより犯罪の絶えない地域のリアルをいきなり見せつけられる。

暴れているギャングの制圧や、ジャンキーによる児童虐待、火災現場からの子どもの救出や、警官を襲った暴漢の追跡などLA市警の過酷な日常が臨場感たっぷりな映像で綴られる。
ともすれば手ブレだらけで観にくくもなりそうなものだが、実際の犯罪現場での瞬時の状況把握の難しさそのものを直感的に表現しているようで、ぼくとしてはむしろプラスポイント。
突然目に飛び込んでくる無残な死体や残酷な現実が如何に彼らの仕事が過酷なのかを物語る。

その一方で、パトカー内での2人の悪ふざけや真面目な会話、家族への思いなどをユーモアとヒューマニズムたっぷりに描くことで、警官も人間であり、感情も涙も家族もあるのだという点も丁寧に描かれる。
特に結婚について真剣に考え始めるブライアンの心境の変化や、妻の出産を経て父親になったマイクの家族観の描写により、より2人の人間味を表現しているように感じた。何より2人が家族ぐるみの付き合いをしている、仕事のパートナー以上の関係性であることの描写が印象的だ。

"バッジと銃を置けばただの人間だ"


そんな緩急で2人の日常を描きながら終盤の怒涛のような緊迫感と、救いのないラストシーンは言葉にし難いものがある。懸命に職務を全うし、仲間や市民のために戦う警察官を嘲笑うかのように多発する重犯罪。命を懸けて戦う彼らに敬意を表したい。
ブライアンとマイクが如何にお互いを信じる強い関係性だったのか。お互いに命を預けられるほどの2人の絆に胸が熱くなる。

"好きなだけ泣け。大丈夫だ。泣いていい。愛してる兄弟"

"彼は兄弟だった"


エンドロール前の最後のシーン、くだらないバカ話でゲラゲラと笑い合いながらも"犯罪と戦うか!"とグータッチで気合を入れる2人にさらに涙が溢れてくる。


ジェイク・ギレンホールとマイケル・ペーニャはロサンゼルス市警で5ヶ月もの訓練を積んでこの映画の撮影に臨んだらしい。2人の熱い演技はもはや警官そのものだったとすら言えるんじゃないかなぁ。2人の名優にも、全ての警察官にも敬礼です。
Tラモーン

Tラモーン