カフェインと猫

ギニーピッグ 悪魔の実験のカフェインと猫のレビュー・感想・評価

ギニーピッグ 悪魔の実験(1985年製作の映画)
4.0
僕は幼少の頃から、母親に今の僕の趣味の類を形成されていたような気がする。

幼少の頃から、音楽ならディープパープルやイエスやブラックサバス等を聴かされ「男ならナヨナヨした曲は聴くんじゃない!男ならハードじゃ!」と言われ、映画なら「ホラーかサスペンス!」と言われ、漫画なら「楳図かずおのホラー漫画じゃい!」と英才教育を受けてきた。

そんなホラー漫画を読んで育っていた僕が、小さい頃出会ったある一冊のホラー漫画雑誌があった。
『ハロウィン』という名の漫画雑誌。

御茶漬海苔先生やら高橋葉介先生やらの漫画が掲載されていたと記憶している。
そんな雑誌を買い漁っていた僕が、好きだったホラー漫画家に日野日出志先生がいる。
そして、ある日、日野日出志先生の漫画の掲載されている雑誌を買った。
その雑誌の表紙を開き、多分巻頭カラーページで掲載されてたのが

『日野日出志先生の元に何者から本物殺人ビデオが送りつけられた。日野日出志先生はそのビデオを元に再現した映像作品を作成している。尚、そのビデオを送りつけた犯人は未だ捕まっていない』

という文章と写真だった。

そこには薄暗い写真があり、その作品の撮影現場が掲載されていた。

小学生の僕は歓喜する。
「こりゃやべーじゃん!そんなの観るしかないじゃん!」
興奮した僕は、その作品がレンタルビデオ店に並ぶのを心を震わせて待っていた。

ついに町のレンタルビデオ屋にその作品が置いているという情報を誰かから掴んだ時は中学生になっていたと思う。
ついに僕はクラスメイト数人とそのレンタルビデオ屋までチャリで走った。
ビデオを手に取り「ねー!これ観よう?」とクラスメイトに見せた。

その作品こそが、この『ギニーピッグ』だった。

「えー?」「怖そうじゃーん」
とダダをこねるクラスメイト。
誰かが「じゃーもう一本、笑える映画借りて、怖いやつ観た後に観て帳消しにすればればいいじゃん」
と言って差し出してきたのが『ポリスアカデミー』だった。

うん、これならイケる。
どれだけギニーピッグが怖くても、ポリスアカデミーを観れば大丈夫。
そんな訳のわからない自信が中学生の僕達には確かにあった。

そして僕の家でギニーピッグのVHSを再生する。
観ている人間、誰も一言も発さない。
やっすん、と呼ばれていた友達はついに膝を抱きかかえて下を向いてしまっている。


ガチャ!…

誰かが僕らが鑑賞会をしている部屋のドアを開けた。
ふと見ると親戚のオバちゃんが立っていた。
ちょうどビデオでは泣き叫ぶ女性の姿が映っていた。
「ははーん♥そうか!もう、そういう年頃か!」
と、すごい笑顔でドアを閉めどっかに行ってしまった。

僕達は完全に、ムラムラした中学生達が、けっこうハードめなSM物のアダルトビデオを観ているんだと勘違いされてしまっていた…

しかし、それを弁明する時間も勿体無い僕たちはギニーピッグを観進める。


そしてエンディングが流れる。
そのエンディングに映る映像が、日野日出志先生に送られてきた本物の殺人ビデオの映像だという噂を誰かが口にした。
「そういうの本当に怖いからやめて」
誰かがつぶやいた。

ギニーピッグ鑑賞会が終わった。
誰も一言も発さない。
沈黙。
完全な沈黙。

僕は無言でVHSの取り出しボタンを押し、ポリスアカデミーのVHSを入れ再生ボタンを押した。
みんなポリスアカデミーを観ている時は笑顔だった。
でも、それはさっきまで観ていたギニーピッグの怖さを忘れるようにと、無理やり作っている笑顔なのだと、そこに居るみんなは理解していた。

ポリスアカデミーも観終わった僕らは、ここで一つ大きな難題にぶつかる。

一体誰の家にこのレンタルしたビデオを置いておくのか、という事だった。

みんな口を揃え「そんなビデオ、触るのも嫌だ」「そんなの家にあったら呪われる」等と言ってくるので、ギニーピッグを観ようと言い出した僕の家に仕方なく置いておくしかなかった。

正直、ギニーピッグのビデオが家にある事がめちゃくちゃ怖かった。
怖かったけど、なんかハマってしまい、その後作成されたギニーピッグシリーズを全て僕一人で観てしまう人間になってしまう。

きっと他のレビューを書いている人達には、なーんにも怖くない作品なんだと思う。
でも中学生の僕には、かなりの精神的な影響を与えているに違いない、と思う。

でもその影響が何なのかは、今でも全くわからない。