日本ではあまり知られていませんが、アメリカにはYA(ヤングアダルト)小説という中高生向けの小説のジャンルがあります。日本のラノベと似ているように思えますが、YA小説との相違点はあくまでも高校生(ティーン)位の少年少女が主役で、大人が物語の意思決定に絡んできません。トム・ソーヤーとか十五少年漂流記みたいな感じです。
映画化もされた有名所でいうと『ハンガー・ゲーム』や『メイズ・ランナー』などが挙げられます。
Netflixの『The 100/ハンドレッド』もYA小説の潮流を組んでいると言えるでしょう。
(あらすじ:地球が核戦争で壊滅的な打撃を被ってから約1世紀、人類が地球で暮らせるどうか見極めるため、宇宙基地に住む100人の若者が地球に送り込まれる)
日本には『時をかける少女』をはじめとして、『アオハライド』や『君の膵臓をたべたい』など高校生を主人公にした名作・傑作映画が沢山ありますが、アメリカでは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と『スパイダーマン』位です。
アイアンマンをはじめとしたMCUのヒーロー達や、DCのバットマンやスーパーマンやワンダーウーマン、みな30~40代の大人が主人公で、唯一、スパイダーマンだけが高校生です。これは一体なぜでしょうか?
その答えは、第二次世界大戦でアメリカは戦争に勝ち、日本は戦争に負けたからです。
日本は戦争に負けたことで「大人への信頼」が瓦解しました。
その一方でアメリカは戦争に勝ったために、大人に対する威信が守られたのです。
日本で高校生が主人公として活躍する小説や映画が多いのは、そこに理由があります。
マーベルのスタン・リーが『スパイダーマン』の原案を出した時に、会社側から「そんなもの売れるわけがない。子供が主人公だなんて!」とボロクソに貶されたそうです。
ところが、スパイダーマンは大ヒットしてシリーズ化されました。
アメリカの認識の歪みが、大人が意思決定に介入しない高校生だけが主人公のYA小説を生み出したとも言えるでしょう。YA小説は、日本のラノベよりも窮屈に思えます。
さて、本題に入ってゾンビ映画『ウォーム・ボディーズ』ですが、YA小説の流れを組んだ青春ものと言えると思います。
●ストーリー
ゾンビとニンゲンが敵対する近未来―。ゾンビ男子Rは、ある日、襲撃するはずのニンゲン女子ジュリーにひと目ぼれをし、助けてしまう。最初は恐れをなし、徹底的に拒絶していたジュリーも、Rの不器用全開な純粋さや優しさに次第に心を開きはじめる。出会ってはいけなかった、けれど、うっかり出会ってしまった二人の恋。それは、最終型ゾンビの“ガイコツ”軍団、そしてニンゲンたちのリーダーでもあるジュリーの父親にとっても許されるものではなかった!彼らの恋は、ゾンビの死に絶えた“冷たい”ハートを打ち鳴らすことができるのか!?そして、終わりかけている世界に、もう一度“温かな”希望をよみがえらせることができるのか!?
この、ゾンビ男子Rは脳を食べた人間の記憶を自分のものに出来るという特殊能力を持っています。そして、映画の冒頭シーンでヒロインのボーイフレンドを食べてしまうんですね。
ゾンビにしては、簡単な単語を話したり、家の中を飾ったり、思考能力があって人間に近いところがあります。
ゾンビ少年と人間の少女の出会い、これは典型的な『ボーイ・ミーツ・ガール』ものです。
青春の王道ラブ・ストーリーですが、相手がゾンビの少年というところが、この映画の特徴です。