よしおスタンダード

スノーピアサーのよしおスタンダードのレビュー・感想・評価

スノーピアサー(2013年製作の映画)
3.4
No.2558
【凍った雪のように硬い格差の壁を、ノアの箱舟は突き破れるか】

自国韓国のスタッフ達で撮っていたそれまでの映画と違い、初めて他国と組んで製作された本作、

ゆえに、良くも悪くも「海外仕様」「ハリウッド仕様」になっている。

人間の心理、内面を徹底的に抉(えぐ)り出してきた「殺人の追憶」「母なる証明」の系統とはもちろんテイストが違う。その系統が好きな人には、本作は物足りないだろう。

海外の役者をたくさん使っているからそりゃテイストも雰囲気も変わっちゃうのは当たり前なのだが、なんだか、いろいろ2時間内に詰め込もうとしてごちゃごちゃしてる感じはありますね。

でも、作りこまれた列車内のカオスな感じとか、エンジンルームの不気味な感じとか、見どころはたくさんあるんですよ。

役者陣も、いろんな制約があるだろうから、自国で作ってた作品のようにじっくりじっくり人間性を描き出すところまではいかなかったかもしれないけど、

たとえば、胡散臭い女総理役のティルダ・スウィントンの老獪さとか、ギリアム役のジョン・ハートの「人生悟ってる感」とか、芸達者な役者陣を堪能できます。

アジア代表として、ソン・ガンホも存在感を示してくれている。(日本人も出てきますが、はっきりいって扱いが雑で残念・・・)。

あまり評価は芳しくない本作ですが、それでもこれを撮ったことによって、ハリウッドや海外にポン・ジュノの名前が浸透したことが、のちのち「パラサイト」の各賞受賞につながった、とも考えられるので、それはそれで意味があったのですよ。