霧に包まれ、視界が遮られる前半からからりと晴れ間の覗く後半。雲ひとつない雄大な山をポツリと歩く背中の孤独さが身にしみる。
DVDに付いていた小冊子に、政治的メッセージはないと書かれていたけれど、そんなはずあるか？霧に包まれていた不可視の存在を、確かにそこに生きている者として存在ならしめる行為が政治でなくてなんだ？
この映画が苦しさや貧しさだけを感じさせないのは、霧と対比的に現れる湯気の立ち込める食事シーンや父が子の足をお湯で洗うシーンがあるからとも言えるが、それ以上にワンビンの冷静なカメラに構うことなく、生き生きと躍動してしまう沢山の動物達のためだという気がする。
犬と一緒に羊を追いかけていたら、突然鶏が猛ダッシュでフレームインしてきて一緒に羊を追うシーンとか最高だ。
