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熱波のodyssのレビュー・感想・評価

熱波(2012年製作の映画)
3.5
【失ったものにしか輝きはない】

かつてはスペインとともに世界を股にかけた大国だったポルトガル(日本の種子島にもやってきて鉄砲を伝えて――異説もあるけど――いるし)。いまはイベリア半島の一角を占める小国に成り下がって(失礼!)いますけど、そのポルトガルがアフリカの植民地を失う直前の、つまり小国に成り下がる直前のお話ですね。

第一部は小国になった現代のポルトガルが舞台。つまらない日常を描いている。退屈で、途中うとうとしてしまいました。意図的にそういう作りにしたんでしょうけど、それにしても見事なまでにつまらない。

これが第二部になると俄然面白くなる。1960年代、ポルトガルの植民地だったアフリカでのお話。要するに不倫の物語なんだけど、モノクロで、言葉は語り手だけによって発せられていて、また展開というか見せ方がハリウッド映画なんかと異なっていて、過去に遡及した映像らしい独特の魅力を持っている。監督の個性が光っている、なんて言い方は月並みかな。

でも、輝く人生って、過去にしかないんだよね。「今」はいつでも輪郭が曖昧でうっとうしい。失った植民地での、失った不倫関係だかからこそ、あのときだけ人生が輝いていたように思える。それを承知の上で作られた映画でしょうね。
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