Jimmy

刺青のJimmyのレビュー・感想・評価

刺青(1966年製作の映画)
4.8
角川シネマ有楽町にて7年ぶりの鑑賞。

7年ぶりにスクリーン鑑賞したが、今回は「4K修復版」なので格段に映像が綺麗だった!
本作は、若尾文子が増村監督と格闘して作ったような映画で、全編にわたる熱演が凄い。
背中の蜘蛛が生きているみたいだ。この妖艶さが堪らない。そして、やはり映画館の中で聞こえてくる独特の若尾さんの声にしびれた…(笑)

冒頭、拉致された艶やかな和服美女(若尾文子)が眠らされて、背中に「蜘蛛の刺青」を入れられるシーンから始まる。
そして時間が遡り、この刺青された女性は質屋のお嬢さん(店の主人の娘)で、手代の「シンドン(新助)」と駆け落ち場面へ。その駆落ちを手助けした権次は悪党、質屋から娘探しの金を貰う一方で娘を芸者として売り飛ばす。新助を殺そうとするが、この殺し屋がショボい…(笑)
新助は殺し屋を殺して、お嬢さんを探すが、既に刺青彫られて売り飛ばされた後だった。
そして、若尾文子の背中いっぱいに掘られた「生きているような女郎蜘蛛」のためか、次々と男達が殺されていく……。

不思議な刺青に運命を狂わせられる男女を、色鮮やかな色調で描いた増村保造監督の傑作。
この傑作は、若尾文子なしでは有り得なかった…と思わせられるほど、若尾文子の妖艶さに頼り切った映画だと思う。

今回の「若尾文子映画祭2020アンコール」でも、「若尾文子さんインタビュー音声付特別映像」の上映あり。(インタビューは2020年1月28日収録)
若尾さんの発言としては、「溝口先生は怖かった。(赤線地帯では)なかなか撮ってくれなかった。先輩たちにも相談できない。(撮影監督の)宮川さんが顔変えてみようか…と言ってくれた」、「小津先生は細かい指導。ピケ帽かぶって自宅でも歓迎してくれた」、「増村さんは、父親と同じ山梨県出身。青空娘ではピンポン出来ないのに撮影があったのでピンポンした。特に、妻は告白するで勇気づけられた。増村さんからは『妹みたいなもんだ…』と言われた。からっ風野郎の三島さんが演技しているように撮るのを苦労していた。好きなのは『清作の妻』!五寸釘を自分の掌にグリグリする場面は脚本には無かった。そして『刺青』は毎日お風呂入ると取れちゃうので、スタジオに早く行って毎日描いてもらった」、「共演者エピソードでは、『女系家族』などの京マチ子は大きい存在。いつも関西弁でね…」、「市川雷蔵は普段はメガネをかけていてチョッカイだされていた」、「プライベートでは、ブリジットとクロベーという犬(猫だったかも…?)を飼っていて、いつも声がイイと言われる、『越前竹人形』の「キスケは~ん!」の話」、「学生時代は映画館に一人で行けずに、映画館で観たバーグマンとゲイリー・クーパーの映画に感銘を受けた」、「愛車はベントレー」とのこと。
個人的には、既に知っているエピソードが多かったが、若尾さんの肉声で語られるとやはり、これまた良い!(笑)
そして、特別上映の最後に、若尾さんから映画館の観客へのメッセージ「ご来場の挨拶ですが、ご来場ありがとうございます。ここで上映される映画は宝物です。自分の目標を達成したとは思えないが、映画を好きです、好きです、大好きです!」を聞いて感動した!
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