cocumi

ドリーマーズのcocumiのネタバレレビュー・内容・結末

ドリーマーズ(2003年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

この作品ね、借りに行ったらどこにもなくて
近くにいた男性店員さんに聞いたら
「ちょっとココで待っててくださいね」
って言われてアダルトな所へ消えて行きました……という時点で察してください。

過激な描写が盛り沢山なオトナ向け作品です。
間違っても家族や異性の友達とは観ない方が◎

私は 全体的におしゃれで画角も凝っていて
内容も深い良い映画だと思っていますが
賛否両論、評価が分かれる映画です。
特にお風呂のシーンの三面鏡を使ったカメラワークは
見せ方が面白くて好き。

舞台は1968年、五月革命直前のフランス。
映画フリークな米国人留学生マシュー♂が
同じく映画好きな双子のテオ♂とイザベラ♀と知り合い
なんやかんやで双子の家に居候することになり
3人の関係が複雑化していくという物語。

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ここから先ネタバレします
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この複雑具合がね、半端ないのです。
とにかく変わった性格の双子ちゃんたちで
映画を通じて知り合ったこともあって

「これはなんの映画だと思う?」
「当たらなかったら罰ゲームよ」

なんて、
様々な映画のシーンのジェスチャーゲームをするのですが
まるで羽目を外し過ぎた王様ゲームのように
罰ゲームの内容が過激になっていくのです。

そんな異様な光景を目の当たりにして
常識人マシューは言います。
「君たちは変だ。理解できない」

そうね、私も理解できないよ。
と心の中で激しく同意したのも束の間、
そんなマシューの常識がどんどん崩れて
双子達の常識に嵌まり込んでいきます。

常識人だと思っていたマシューが
変に思わなくなっていくものだから
観てるこっちまで
それが当たり前なんじゃないかと思ってしまうのです。

20代前半でこの映画を観ていたとしたら、
私はきっと嫌な気分にしかならなかったと思う。
終わり方もモヤッとしていて後味が悪いので。

でも、30代になった今ならそうでもなくて。
むしろ、物語全体を通して世界情勢を投影していることがわかって面白いなと感じる。

この映画はある程度の時代背景を知っていなければ、
ただエロいだけの粋がった若者の若気の至りを
グダグダ垂れ流した如何わしい映像になり兼ねません。
だから、賛否両論なんだと思う。

劇中、テオとマシューは度々口論になります。
最初は
チャップリン vs キートン
クラプトン vs ジミヘン
と映画や音楽に対しての軽い口論なんだけれども
物語が進むにつれてその内容は
五月革命やベトナム戦争に対する思想の違いになっていきます。

では、ふたりが口論をしているとき
イザベラは何をしているのか。
彼女は決まって我関せずと無言を決め込み、
時折、ふたりの口論を打ち止めしようとレコードをかけてみたり風呂場に乱入してみたりするんです。
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革新派寄りな テオ
無関心な イザベラ
保守派寄りな マシュー
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こんなチグハグな3人組なのに
結局のところ、
仲良くみんなで裸で寝ちゃうし
仲良くみんなでお風呂にも入っちゃうし
片や双子の姉弟だし
片や恋人同士だし
片や友人同士だし
と、物凄くカオスな関係が生まれます。

この混沌とした三角関係自体が社会の縮図だと思うんです。

最期、
五月革命のデモの渦中へ向かっていくテオと
暴力ではなんの解決にもならない!
とそれを止めるマシューと
戸惑いながらもテオに着いて行くイザベラ。
そんなふたりを見て
諦めたように踵を返すマシューを見ていると
行動するのか
傍観するのか
流されるのか
どちらにせよ 正解とかないんだろうなと
なんとも虚しい気持ちだけが残りました。

「今の世を見てみろ、混沌としている」
「だが 神のように上から見下ろしてみれば実は全て調和してる」

映画が終わった後、序盤に出てきた双子のお父さんの言葉が頭の中で余韻のように響きました。

自分があのお父さんと同じくらいの年齢になったときに観たら、また見方が変わるのかもしれません。
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