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ヒットマンズ・レクイエムのtakaoriのレビュー・感想・評価

ヒットマンズ・レクイエム(2008年製作の映画)
3.6
2023年272本目

マーティン・マクドナー監督、コリン・ファレル&ブレンダン・グリーソンの取り合わせは、今年の大傑作『イニシェリン島の精霊』のスタート地点になっている。主演2人のキャラクターもよく似ており、コリン演じるレイは頭が悪いが憎めない奴で、一方ブレンダン演じるケンは知的で、暴走しがちなレイをサポートしている。冒頭の「ホテルでツインの部屋しかない」くだりで分かるように、2人の関係はどこか同性愛的であり、本作をきっかけにしたコリンとブレンダンの交友関係も含めて、『イニシェリン島』の仕掛けにつながっているのを感じさせる。
ジャンルが「コメディ」に分類されているが、過去の罪から逃れられないヒットマンの苦悩という重いテーマを扱っており、見る前に期待したようなドタバタ喜劇とはほど遠い内容。加えて、他の人も多く指摘しているが、「ヒットマンズ・レクイエム」という邦題が大変よろしくない。原題通り「ブルージュにて」とすべきだった。期待とのギャップゆえに、いまいち楽しみきれなかったのは残念だった。
そんな重いストーリーの中でも、会話の端々にギリギリのところでユーモアを差し込んでくるのはさすがマーティン・マクドナーの手腕である。またコリンとブレンダンのコンビだけでなく、悪役のレイフ・ファインズも良い。彼らのアイルランドやイギリス訛りの英語が、ブルージュという異国情緒あふれる街で飛び交うのはとても味わい深い。また、ヒロインのクロエ役、クレマンス・ポエジーも可愛くて良かった。
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