マコ

ヌードの夜/愛は惜しみなく奪うのマコのレビュー・感想・評価

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これはすさまじいノワール!
佐藤寛子すごいな。
チャイナ・タウンよりも深く闇の中に潜ったんじゃないか。
大谷石採掘場でのセルフむち打ちシーンは統合失調症が分裂病って呼ばれてたことに納得してしまうような演技だった。
三上寛の「気狂い」を聞いたときくらい強烈な闇の引力があった。
竹中直人はどうすればよかったんだろうね。
どうあがいても助けてあげられないし、あそこまで人格が破壊されていたら苦しみを和らげてあげることも生きている限りは難しいんじゃないかな。
となると、東風万智子が死によって救ってあげたってことにしてほしかったな。
ストーカー被害にあった女性が何年もたっても精神を病んでいて自分はどうすることもしてあげられない、と竹中直人にふともらすみたいな描写があればな。
そういうシーンがあれば「この悪魔〜」なんていうひどいセリフもなくて済んだんじゃないかな。
東風万智子周りは描写がゆるかった気がする。
死別した夫がストーカーから女性を守って〜それが竹中直人に重なって〜のくだりをもう少し掘り下げないと、竹中直人のことを利用しただけに見えちゃってるとおもう。
性被害、とくに繰り返しの性被害がいかに被害者の人格を破壊するかってことにここまでフォーカスした映画って見たことないな。
他の映画はノワールでも結局女に騙されてた、わけわかんねー、でもあの女俺に気があったよな、最後には女の弱さ見せたよな、くらいまでしか描かれてなくて、自分が被害者にならないと思ってるおっさんが必死に助かろうと手を伸ばしてる女を安全なところから眺めて鼻で笑って終わる程度だけど(というか、この映画みたら他のノワール映画がそんなふうに見えてしまっただけ)、この映画は暗いトンネルの中に入っていくような、自分も闇に同化してしまいそうになるような、そんな凄みがあった。
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