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メタルマンの都部のレビュー・感想・評価

メタルマン(2008年製作の映画)
1.3
そこまでだ、残念だったな──私が映画鑑賞に傾倒した契機である動画投稿者の持ちネタとしてよく用いられたのが本作の『メタルマン』であり、そんな思い出深い作品をようやく手元に置くことが出来たのは感無量と言えます。プレミアが付いてるので中古価格で12000円でした。

さて本作は目に見えた『アイアンマン』のパロディ映画ですが、予算は日本円換算で1億円ほどで、当然の如く豪華なCGIや迫力ある戦闘には恵まれないヒーロー誕生譚となっています。喉輪を主な攻撃手段とするメタルマンの戦闘シーンは派手さに欠けるため、本作の魅力は語り部のカイルに対する稀代のマッドサイエンティスト:ブレイク博士の横暴な振る舞いにこそあると言うべきでしょう。

もう二度とマスクを外せない&スーツを脱げない/食事は砂糖水と糞尿を混ぜたような味のする経口液のみ、とMARVELやDCのヒーローでも背負わないような過酷な苦労の十字架をカイルは背負うことになるのですが、これがすべて事後承諾というのが恐ろしい。悪びれなく英雄であることを強いてくる科学者と善良ゆえにそれを受け入れてしまうカイルという構図はどこかストックホルム症候群を想起させます。

と作品としての愉快なのはそれだけで、Z級映画として味気ない掛け合いや無駄な場面の連続に面白味に欠けるカット割りと作品としての完成度で光るものは皆無です。さして奥行きを感じられない設定の割に話のテンポが致命的に悪いのも苦痛なる鑑賞体験の無視出来ないデカ要因となっていて中盤〜終盤の中身のなさが凄まじかったですね。

正義の為に普通の人間として生きることを放棄した二人が歪ながら惹かれ合うラストシーンは実は好きでもなくもないのですが、よく考えてみると欠陥品に等しい仮面を作ったブレイク博士の瑕疵さえなければこんなコアなAVさながらの絵面にはなっていないので気のせいだと思います。
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