Yoko

トゥ・ザ・ワンダーのYokoのレビュー・感想・評価

トゥ・ザ・ワンダー(2012年製作の映画)
4.5
 パリとオクラホマを舞台に、男女3人と神父を据え、愛や救いをテーマに描いた(と思われる)作品。

 人々の心の距離感を人物の視線や実際の距離感で演出している映画として純粋たる映画。
説明や間を極力排したカット割りはやはり万人受けしないであろうが、エマニュエル・ルベツキが手掛ける風景や人物、全てのショットが神的な美しさを帯びている。
 特に今作のテーマである「愛」と密接に関係している「水」の捉え方のなんと美しいことか。本当に素晴らしかった。
自然光を活かしたショットも本当に惚れ惚れしてしまうし、人物のすれ違いを表現するための緻密な人物の動きも凄い。

 ストーリーで惹くイメージがなかったテレンス作品だったが、後半には何故か涙がこぼれた。
私自身一定の宗教に属してはいないが、まさに洗礼を受けた時のような、はたまた告解を済ませた時のような、心が洗われる感覚を覚える。
 決して強いインパクトを残さない今作の音楽も、「作品のBGM」として素晴らしかった。
OSTで聴いても意味がない。今作の背景として流れるからこそ活きる音楽があった。

 言葉や文字では表し尽くせない生理的な感動をまさに「画」で湧かしてくれた作品。
「画」だからこそ万人が今作の物語を多種多様に受け止めるであろうし、それを許容してくれるヴェールに包まれた作品を観ることが出来ました。
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