MasaichiYaguchi

麦子さんとのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

麦子さんと(2013年製作の映画)
3.5
ドラマチックな展開がある訳でもなく、内容的にもこじんまりとした作品だが、木枯らし吹き荒ぶこの頃、心にぽっと赤いスイートピーが咲いたような明るさや温もりがある。
アニメ好きなヒロイン・麦子を掘北真希さんが愛らしく演じていて、映画に登場するオジサンたち同様、私も彼女に胸キュンしてしまう。
映画は、両親の離婚によって長く隔たっていた母と娘の「再会」のドラマを描く。
声優を目指しアルバイト生活をしている麦子は、パチンコ屋に勤めるやや頼りない兄との二人暮し。
そんな二人が暮らす所に、長らく別居していた母・彩子が突然転がり込んでくる。
親子の長い空白はそう簡単に埋まる筈もなく、ギクシャクとした親子水入らずが始まる。
麦子は母から捨てられたという思いが強く、本心では甘えたいのに、片意地張って辛く当たってしまう。
この母・彩子を余貴美子さんが、溢れんばかりの子供たちへの愛情を秘めながら、不器用に接していく姿に心打たれる。
松田隆平さん演じる兄・憲男は、照れ隠しにぶっきら棒な態度や言葉を投げ掛けたりするが、母や妹に対する愛情を滲ませる。
母と子の蟠りも解消する間も無く、ある日母は急死してしまう。
納骨の為に母の故郷を訪れた麦子は、若かりし頃の母の意外な面を垣間見ていく。
ここから本当の意味での「母と娘の再会」のドラマが始まる。
故郷の町の人々と母・彩子とのエピソードは、近年社会現象となったNHK連続テレビ小説「あまちゃん」を彷彿させるような所もあって楽しい。
「孝行したい時分に親はなし」
人は亡くなってみて初めて、親の恩に気付くものなのかもしれない。
この作品を観ていると親の無償の愛で満たされ、ラストに流れる曲と共に心に赤いスイートピーが咲きます。