砂利川権兵衛

野獣死すべしの砂利川権兵衛のレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
3.1
メチャクチャおしいな。決して嫌いではないのに、演出が所々クソダサなせいで、微妙に没入感を削いでるの本当に良くない。銃の試し撃ちで売人を殺害するシーンのスローモーション演出は、松田優作の異常性を強調するのに寄与していて良いなと思ったけど、ヒロイン枠だった女性を殺害するシーンで同じようなスローモー演出を再度擦ってもテンポが悪くなるだけだし、感傷的過ぎて好みから外れる。実際の戦争の映像を使いながら、松田がいかにしてあのような存在に成り果てたのかを懇切丁寧に説明してくれるのも大きなお世話で、「怪物」の誕生に過剰な意味/物語を付与するな!! とキレそうになってしまった。最低限の「点(ヒント)」を置いてくれれば、こっちで勝手に線と面を作って好きなように解釈するので、余白を失くすようなマネは控えてクレメンス。そのせいで、『蛇の道』みたいな悍ましさのあるラストが台無しになってる。ような気がした。

それはそれとして、松田優作の目ヂカラと芝居(特に別荘とクラマックスの独演会)は全体的に素晴らしかった。マジで現世に蘇った悪霊感あるし、こんなんただの鹿賀丈史を唆す美しきメフィストフェレスじゃん!! リップ・ヴァン・ウィンクルの話をしながらロシアンルーレットやるくだりからのトチ狂いっぷりは最高としか言いようがないし、肉体という衡から解き放たれて純粋な悪の概念そのものにでもなった風情。概念になったので走行中の列車から飛び降りても無事。はっきりわかんだね。松田(と「従者」の鹿賀)が概念的なモノになったと解釈すれば、あの異様に観念的な終盤にも激しく納得いく。少なくとも俺は納得させられた。