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野獣死すべしのodyssのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
3.0
【前野曜子さん】

BS録画にて。
今回が初鑑賞でしたが、松田優作主演の犯罪映画。
東大卒のエリートながら、海外での取材活動をへて虚無感をかかえこんだ犯罪者へ、という過去が徐々にあきらかになっていきます。

最初の、警官を襲って拳銃を奪うシーンはしょぼいし、その後のヤクザを襲うシーンも同じですが、銀行からカネを奪う計画を立てるあたりからかなりスタイリッシュになり、映画らしくなっていきます。

音楽もスタイリッシュ。ショスタコーヴィチの交響曲5番やモーツァルトのピアノ協奏曲第21番を、スピーカーのウーファーが震えるような音響で聴くシーンや、実演でショパンのピアノ協奏曲第1番を聴くシーンがなかなかでした。

実演を担当しているのが東京交響楽団ですが、40年前の東京交響楽団って、失礼ながらあんまり上手じゃなかったんだなと思いました。現在の東京交響楽団は、日本でも第一線級のオーケストラになっていますが。

ラストになるとちょっと「壊れてくる」感じの映画ですね。その意味で、最初はつたなく、中盤は映画らしく、終盤は壊れる、という構成なのかと。

小林麻美が美しい。私は彼女はあまり好みではありませんが、この映画での彼女は魅力的。特に、タクシーに松田優作と一緒に乗っていて、松田が一人で下りようとするときに「私と一緒にいて」と動作で示すあたりはぐっときました。

それと、冒頭を見ていて、出演者名のテロップに前野曜子さんの名があるのにびっくり。
前野曜子さんは、ペドロ&カプリシャスの初代ボーカル。一般には二代目の高橋真梨子さんのほうが有名ですが、前野さんの歌唱を知っている人間には、やはりこのグループのボーカルは前野さんと思えるはず。繊細な美貌も印象的でした。

前野さんは数年でペドロ&カプリシャスを脱退して、週刊誌報道では黒人の恋人を追って渡米したということですが、やがて別れて帰国。音楽活動に復帰しましたが、わずか40歳で亡くなりました。本当に惜しいことだと思います。

しかし、この映画を見ていて、どこに前野さんが登場するのか分かりませんでした。どうせ使うならちゃんと使ってあげたかった。後で調べたけれど、主題歌を歌うといったことではなく、映画作品に前野曜子さんが登場するのはこの映画だけらしいので、なおさら「ちゃんと使ってあげればよかったのに!」と言いたくなりました。
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