mitakosama

野獣死すべしのmitakosamaのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
4.4
何度見たか解らないがこの度スカパーにて再視聴。やっぱり優作の最高傑作は今作だと思う。
もうね、狂気としか言い様がない。ただただ狂気じみてる。

野獣死すべしは仲代版も傑作。藤岡版は普通。一八版は未見。だがこの優作版はちょっとレベルが違う。
原作の大藪春彦の描いた主人公・伊達は仲代版に代表されるような心身共に優秀で健全に見えるサイコパスなキャラクターだった。クリスチャンベールのアメリカンサイコに近かったんだよね。

元々戦後の話で戦中での経験が主人公をサイコ化させていたが、今作の伊達は通信社カメラマンで海外の戦場を取材していた設定に変更されている。
それと同時に不健全で病的なキャラクターに変更。ガリガリに痩せて血の気の無い無表情な顔つきに。先ずこの役の作り込みがエグい。

刑事を殺し拳銃を奪ったエリートの伊達。銀行襲撃のために凶暴な青年・真田(鹿賀丈史)をスカウトし人殺しを覚えさせる。
犯罪の捜査上に上がらなかった伊達だが、唯一柏木刑事(室田日出男)だけが感づき伊達を追う。

鹿賀丈史も凶暴な若者を上手く演じている。
あと室田日出男も最高に良い。伊達にロシアンルーレットで殺されそうになるシーンの緊迫感よ。個人的には室田の最高傑作だとも思う。

そして柏木刑事を殺してからの伊達の狂喜乱舞っぷりがこれまた凄い。狂気という言葉がこれほど合う演技は外に思いつかない。
狂気から狂気への豹変。本当に命がけで演じたということがわかる。邦画における演技の究極として歴史に名を残す名演だと言い切れる。
mitakosama

mitakosama