次々と殺人を犯す元カメラマンの男性・伊達邦彦の狂気を描いた、村川透監督、松田優作主演による犯罪映画。原作は大藪春彦のデビュー作となる同名小説で、出版直後の1959年に続く二度目の映画化作品。
久しぶりに原作小説を読んだのがきっかけで、映画化作品として有名な本作ではどんな風に描かれているのかを確かめたくて鑑賞したが、原作から大幅に改変されていたのにはちょっと失望。村川透と松田優作の名コンビが原作のタイトルと主人公の大まかな人物像だけを残してやりたい放題に換骨奪胎し、大藪春彦がどう思ったかはわからないが、角川春樹はOKを出したという代物。
小説が発表された頃と時代が異なるので仕方ない面があるにしても、大藪小説のハードボイルさが毀損されているので、個人的には低評価。そもそも主人公である伊達邦彦の人物造型が大きく変わっていて、小説よりもオーソドックスになっている。この種のハードボイルドにカメラマンとして経験した悲惨な戦場のトラウマとかの合理的な説明は必要ない。松田優作の演技も、当時としては新鮮だったのかもしれないが、今見るとオーバーアクション(松田優作だけではなくて鹿賀丈史もそう)なのがちょっと鼻につくし、それほど特徴的というわけでもない。むしろ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で殺人犯を演じられても、滑稽にしかみえない。松田優作にはこういうハードボイルドな役は似合わない。せいぜい「なんじゃこりゃ」までだろう。
小林麻美の起用も無理矢理感が満載。なんだか実在する人物とは思えないような存在感で、いっそ主人公の幻覚だとしてしまったほうがよかったのかも、ってもしかすると本当にそういう意図だったのかもしれない。