酢

ながらえばの酢のレビュー・感想・評価

ながらえば(1982年製作の映画)
3.3
兎にも角にも笠智衆。山田太一脚本は笠智衆とタッグを組むにあたって綿密に戦略を立てている。笠智衆なら物語が本格始動するまで台詞なしでも存在感で十分に持つ。周囲の登場人物たちの台詞で舞台設定が立ち上がりさえすれば、あとは状況に笠智衆を放り込む。笠智衆の強みは受け身のリアクション。それを追うことに注力できる賢い作り。

最終盤にある笠智衆の泣き芝居は素直に凄いね。顔全体で泣いているよう。実際には涙は流してないらしいけど、そんなことはもはやどうでも良い。こんな「何にも似ていない芝居」はそう見れるものではない。相対する堀越節子の受けも素晴らしい。宇野重吉との異種格闘技老人俳優対決も見もの。
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