マリオン

MAMAのマリオンのレビュー・感想・評価

MAMA(2013年製作の映画)
4.0
ある事件により二人だけで5年間山小屋に住んでいた少女達を引き取った夫婦に起こる恐怖を描くホラー。ただのホラーかと思いきやダーク・ファンタジー的でもある不思議なバランスな映画でそこに母性の渇望、目覚めも描かれる。今までのホラーにはない新鮮さが要所要所に散りばめられていると感じた。

5年間も山小屋で二人だけで生活していた少女たちを引き取ることになった叔父夫婦。彼女たちは野生に溶け込んでいるせいか姉はかろうじで言葉をしゃべれるが妹はしゃべれないなど人間社会で暮らすには困難であった(狼に育てられた少女の話を連想させる)。そんな生活を始めた新しい家族に付きまとう少女達が「ママ」と呼ぶ存在。様々な怪奇現象が起こるなか妻は母になっていく。妻はロックミュージシャンで冒頭、妊娠検査器で子供ができていないことを知ると「神様ありがとう!」と発言する。恐らくまだ自由な生活をしたいのだろう。そんな彼女が少女達を守ろう、育てて行こうとする決心の過程がしっかりしていて、後に二人の母の母性の戦いになり、そのラストのなんともいえないもの悲しさに痺れるのだ。虫のモチーフやもの悲しさはまるでパンズ・ラビリンスのようだと思ったら製作総指揮がギレルモ・デル・トロと聞いて納得だ。

アンディ・ムスキエティが表現する肝心のホラー描写もかなり見ごたえありだ。貞子や伽椰子にも通じる奇怪な動きをするママの存在をねっとりと長回しで撮ったり、壁一枚隔てた先で起こる不気味な出来事など恐ろしさ抜群だ。またこの映画の元となった短編の撮り方が再現されるかと思いきや捻る展開もあって思わずニヤリとしてしまう所も。フェルナンド・ベラスケスの美しい旋律のスコアも素晴らしかった。ジェシカ・チャステインの演技も素晴らしかったし、特に少女達を演じた子役は本当によくがんばったんだろうなと思った。

親と子の絆を描くホラーはたくさんあるがイチから家族の絆、母性を作り上げる話はあまりないし、パンズ・ラビリンスが大好きな自分としてはダークファンタジー要素があることを知らなかったのですごく楽しめた。これもちゃんと劇場公開すればよかったのになぁ…。
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