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親密さのmanyucinemaのレビュー・感想・評価

親密さ(2012年製作の映画)
4.3
オープニング。ホームに滑り込み、乗客を吐き出す電車。階段を駆けあがり、発車間際に電車に乗り込む若い男女。女は息を弾ませながら、おそらくは恋人であろう相手を笑顔で見上げた。その美しい笑顔に、ぎゅっと心を持ってかれた。まさしく、その笑顔は「親密さ」にあふれていたから。
この映画は、最初から最後まで「親密さ」の在りようを丁寧に追いかけ、映し出す。恋人同士の、兄弟の、仲間同士の、さまざま関係のその時々に満ち引きする「親密さ」。
車窓に流れる空、徐々に開けていく夜、競うように並走しながらやがて分かれていく電車……。どれもが「親密さ」の表現を深める手立てになっていて、ただただ深く感動してしまった。
そして驚くのは、半分ドキュメンタリー的であることもあってか、後半の舞台の上演では、役者たちが本当に成長していてキラキラ輝いていたこと。自分が役者を演じ、その演じる役者がまた劇中劇で別の役を演じる。その入れ子状態から偶然に、または必然的に発出されるなにかが、私たち観る者を魅了するのだ。4時間超の時間をかけて、同時進行的にその現場に巻き込まれてしまった。
この体験はなんとも言葉にし難く、忘れがたい。
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