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親密さのo219028tのレビュー・感想・評価

親密さ(2012年製作の映画)
5.0
── 「親密さ」の台詞は、その単調な反復性にもかかわらず、聴覚に、たえず変容せよと語りかけてくる ──
何の変哲もない台詞でさえ、台詞のドリー効果とでもいうべき、その反復のうちに、しかるべき文脈におさまり、しかるべき修辞学的な装飾をほどこされることで、途端に別の意味をそなへ、それが、見る者を、ふと人生論的な感慨へと向かわせる。映画自身が台詞を通して人生への接近を試みているようだ。
── 見ること、つまり視線というものは絶対にフィルムには写らない ──
切り返しショットは、視線を画面に定着させえない映画自身がその限界ゆえに捏造せざるをえない虚構の証しと言っていい。それは、凝視しあう二つの瞳を同じ一つの固定画面におさめることができないという映画の限界から導きだされるものである。
見つめあう二つの瞳に対して、映画はいつも敗北しつづけるほかはないはずなのに、この映画には、あろうことか、演劇の力を借りて、視線を撮影しようと試みた見事な空間処理をしている瞬間がある。
こんな創意に満ちた演出をやってのける映画作家は他にいるのだろうかというほどの驚きである。
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