主人公の女性は、夜にダイニングバーのバイトが入っているので、朝帰りになる。男性は、独り明け方まで台本を仕上げて、始発の電車に乗る。橋の上から手を振る女と、それを電車から見る男。
このやり取りがしっかり効いてくるのには、泣くところだった。
夜から夜明けになるまで、対話を重ねながら歩く二人を撮り続けるロングショットが素晴らしい。そのやり取り自体もとても切ないのだが、待ち受けるエンディングによって、より切ないものとして思い出される。
後半の演劇パートも、実験的な部分もありながら、ただ演劇を撮影するのではなく、演劇を映画として撮影していて、非常に試みとして良かった。が、さすがに長い。男女の複雑な恋愛模様などは、のちの『ハッピー・アワー』に踏襲される。
他のシーンも、のちの濱口竜介作品に通ずる箇所がたくさんあり、お気に入りの設定・演出・モチーフなんだなぁと、読解の一助になった。稽古中の喧嘩シーンは『悪は存在しない』でも印象的なシーンに使われていたし、隣の車輌から歩いてくるところを映し込むところは『ハッピー・アワー』にもあった。
ラストシーンは、オチも含めてちょっと頭を抱えるぐらい良かった。