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アルプスのネットのレビュー・感想・評価

アルプス(2011年製作の映画)
3.5
ランティモスなので期待値が低かったせいか、わりあい楽しめた。演技行為が変なものとして提示されてるのはハマリューよりすんなり受け入れられる。
序盤、病院のベッドに臥している大怪我したテニス選手の女の子に、ラケットを持たせてそこにテニスボールを当てる。テニスボールを打つ感覚をベッドで味わわせる。見てるこちらもラケットでボールを打つ感覚が思い起こされる好きなシーン。だけど彼女にとってこの行為は本当のテニスの代替にはならない。新体操選手にとってクラシック音楽はポップスの代替にはならない。この「代替」というテーマは新作短編『Nimic』でも見られたもの。
身体が自動機械のように動いてしまうことのおかしみ、それに気づく瞬間としてのセリフ間違い。It feels like paradise. ではなくheaven。ここの笑いとラストの笑みは別種のもの。切実さはあるが、ラストの皮肉的な態度がやっぱりあんまり好きじゃない。そういう意味では『ロブスター』のラストの方が良いと思う。
ランプ店での喧嘩→仲直りの演技はギャグでしかないと思うし笑ってしまったのだが、ここでギャグとして披露された” I love you.” が、『ロブスター』では真偽の境界線をより曖昧にするやり方で発されるのは感動的。『ロブスター』では “ I love her.” だったが。
主人公は少女の代替を演じるようになるわけだが、そのサービスを受ける少女の両親の顔が不思議と記憶に残らない。
『ロブスター』『聖なる鹿殺し』での仰々しい音楽の使い方は抑えられている。
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