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リアリティのダンスのakqnyのレビュー・感想・評価

リアリティのダンス(2013年製作の映画)
3.7
ホドロフスキーの幼少期を描いた自伝的作品なのだが、彼自身というよりも彼の父親を主題とした作品なのだと思う。(エンドレスポエトリーはその続きのような作品で、同様に父親役はホドロフスキーの長男が演じています)

優しい性格のアレハンドロはロシア系ユダヤ人の移民の息子としてチリのトコピージャに生まれたが、周りからは差別され、また性格を男らしくないと思った父親は徹底的にアレハンドロを自分の求める息子像に押し付ける。母はアレハンドロを死んだ彼女の祖父だと信じており、彼自身には興味がなさそう。どこにも居場所がない彼は父親に気に入られようとどんなに暴力を振るわれようと怒られようと空虚な父性を求めて彷徨うのだが、その関係性がなんとも痛々しい。

そんな厳格で旧時代的な父親も、共産主義者で革命を夢見た理想主義者でもあって、また同性愛者にも理解があるという現代でもリベラルな考え方を持っていた人として描かれる。


彼は革命をあと少しで成し得ようとするが、幸か不幸か、一度人を殺めようとした彼の指は、引き金を引く瞬間のまま硬直し、再びその指を伸ばしたのは、遠くサンティアゴで徳を積み、正義を貫き、故郷で彼のかつての理想と彼の過去を打ち抜いた時、ようやく家族を抱きしめることができるというストーリー。


その二面性にホドロフスキーの描きたかった父の姿が見えるような気がしてならない。

また、ホドロフスキー自身も彼の息子、つまりこの映画で父親役を演じたブロンティスに対して幼少期に厳しく当たってしまったことがあるようで(ブロンティスは主役を務めるはずだったDUNEの撮影のために2年間1日も休まず武術稽古を強制されたそう)その自身の父親たり得なかった行動への自戒も含まれているのだろう。。
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