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42〜世界を変えた男〜のchamのレビュー・感想・評価

42〜世界を変えた男〜(2013年製作の映画)
4.2
昔、日本のプロ野球にアメリカからやってきた助っ人外国人選手が球団から背番号42を渡されたとき、「アメリカでは付けられないジャッキー・ロビンソンの背番号が付けられて光栄だ」と言っていて、それで42番をつけていた黒人初のメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンの事を知り、彼が付けていた背番号がメジャーリーグでは唯一の永久欠番になっていることを知った。

今や黒人選手も大活躍のメジャーリーグで黒人選手が排除されているのが当たり前だった時代。野球の才能があっても、黒人であるというだけで敵チームからの汚い野次だけではなく、チームメイトや観衆からも敵視されてしまう。そんな彼がいかにして周りから受け入れられ、純粋な野球ファンを惹きつけるまでに至ったか。

今もなお、世界中で声を上げ続けなければならない状況が続く人種差別問題。海の向こうの出来事にどこか冷ややかな目で見てしまいがちな日本人も多いけれど、これだけ根深く続く問題を、当事者だけで解決できるものではないのはこの映画を観ていても気づかされる。
メジャーで多くの黒人の選手が大活躍するようになったのは、世間の批判に晒されても決して自分の感情に負けず野球で結果を残したジャッキー・ロビンソンのおかげだが、世間の反感を食らいながらも彼をメジャーへ迎え入れ諭し支えたGMブランチ・リッキー(ハリソン・フォードだったの気づかなかった!)や、ともに世の中の理不尽に耐えながら苦労を分かち合った妻の存在、汚い罵りを浴び黙って耐えるジャッキーを傍で見ながら彼の代わりに怒り、偏見を捨てた白人チームメイトたちの力、彼のプレーを素直にかっこいいと感じ応援したファンの思いが重なり合ったからこそ開けた歴史の1ページだった。野球は一人でできるスポーツじゃないけど、これこそまさにチームプレー。

メジャーリーグでは、毎年4月15日に選手が皆背番号42のユニホームを着用するジャッキーロビンソンデーが制定されている。今年は新型コロナの影響で、4月15日にできなかった代わりに8月28日に変わったが、その日がこの映画でジャッキー・ロビンソンを演じたチャドウィック・ボーズマンが43歳の若さで亡くなってしまった。ジャッキー・ロビンソンと同様に、映画で活躍する彼の存在に勇気づけられた人々もまた多いだろう。彼が残した作品をこれからも大切に観ていこうと思う。
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