cham

ミナリのchamのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.4
表面的に人間を判断しがちだったり、簡単に分断してしまう今の世の中に、おだやかな時間をくれるような世界が広がっていた。
80年代、韓国から移住してきた家族が、アメリカの何もない土地で農作業を始めるって、想像するだけで大変そうなことだけれども、さまざまな苦難はのしかかるものの、人間同士のギスギスした争いや事件(人種差別など)は起きず、この映画は宗教や人種を超えて、今の時代に必要な事だけをあえて見せてくれてるような気がした。

とはいえ、夫婦も意見は合わずバラバラだし、農作業を手伝う信仰心の強いおじさんも変人扱いされてるし、みんなそれぞれに他人に踏み込めない何かを持っている。韓国を知らないアメリカ育ちの孫と、孫にとっては破天荒な韓国人おばあちゃんが徐々に距離を縮めていく様子に、人間同士の本来の繋がりを見たような気がした。

苦しい時ほど周りが見えなくなって視野が狭くなりがちだけど、こういうときこそおばあちゃんみたいな存在は心強い。
結果的におばあちゃんは家族の中に居ずらくなる状況になってしまうけど、それでも孫たちがおばあちゃんの姿を追うのは、生きていくために大事なことをおばあちゃんからたくさん与えてもらっているからだと思った。

私の祖母も、1年前に亡くなったけど、すごく厳しくて働き者で大変な時代を生き抜いた昔のおばあちゃんって感じの人で、ミナリのハルモニとはまたタイプが違うけど、表面的なことではなく、本当の意味で人に対して強さとやさしさのあるおばあちゃんだった。この映画を観ていておばあちゃんの存在の心強さを思い出した。この世界で生きていくために本当に大事なことを持っている人たちなんだろうなって思う。

この映画はのんびりした映画だったけど、一個一個気になる場面が多くて、またじっくりいろんなシーンを見返したいです。
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    cham

    cham

    よかったと思う映画を中心に忘れないように