けんけん3号

オスロ、8月31日のけんけん3号のネタバレレビュー・内容・結末

オスロ、8月31日(2011年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「 わたしは最悪。」が良かったので、ヨアヒム・トリアー監督の本作を鑑賞。主人公がひたすら切ない作品。薬物の厚生施設からあと少しで出所出来るのに、自殺未遂をする。薬物に手を出した人間というレッテルを貼られて、社会復帰しなければならないプレッシャーに押しつぶされたんだろう。現実を受入にはあまりにも自身が無力であり、拠り所とする人もいない。だから自殺未遂なんだろう。彼がどんな間違いをしたのか描かれないが、罪を犯していれば、人を傷つけるし、孤独になるだろう。薬物に手を出した彼にも辛いことがあったんだろうが、そこに逃げる弱さがあるのも事実。そして世間一般的な価値観からはじかれ、自己否定をして葛藤する。しかし、罪を犯すということは、そういうこと。自身も同じ境遇なら、この映画のようになるかもしれないので、主人公の気持ちは分からないでもないが、同情は出来ない。主人公には孤独という言葉が重くのしかかる。友達に励まされれば拒み、次のステップの為の面接も自ら中断してしまう。そういう自分が駄目なことが分かっているし、どうにも出来ないもどかしさ、弱さがひたすら切ない。人は独りでは生きていけないということを痛感する。更生の難しいリアルがある気がした。その葛藤が淡々と美しい街並になぞられて展開するので、静かな悲しみに包まれる。さらに世間一般的な価値と自分の価値の対比。家族、友達、女性、人との関わり、何処で間違えたのかという人生の回顧、カフェで聴こえてくる素晴らしい人生設計を話す女性の声が主人公に追い打ちをかける。街の声をピックアップするこの演出は上手かったな。
8月31日というけじめの日に主人公の選んだ行動が痛かった。個人的には気持ちは分かるが、どうしたらいいのかわからないネガティブをうまく映像化してる気がした。