オスロ、8月31日の作品情報・感想・評価

「オスロ、8月31日」に投稿された感想・評価

ゆうゆ

ゆうゆの感想・評価

4.8

かつて苦楽を共にした友人との
少しずつ噛み合わなっかったお喋り、
自暴自棄に蹴散らしてしまった
面接でのやりとり
繋がらない恋人への電話
会えなかった妹
無邪気に未来への夢を語る女性をまるで
遠い世界にいる人のように見ていた
硝子の眼差し
さいごまで反応のなかった
愛する人への電話

世間からひとり取り残されたような
佇まいの青年は
オスロの街を虚ろに彷徨いながら
移ろう季節の風を感じ疎外感を強めていき
夏の終わりの少し冷えた空気に身を震わせ
白い靄に包まれる

人との出会いを重ねるたびに
孤独やとりとめのない悲しみ、
虚しさに染った薄いベールを
彼は一枚ずつ纏っていった

やがて新しい季節を迎え入れる新たな
夜明けが訪れて世間が目を醒ますころ
開けたカーテンをふたたび閉ざした青年は
ピアノの悲しい音色にいざなわれ
絶望で覆われた殻の中に
小さくうずくまる
苦しみの笑顔に蓋をして
深い眠りに堕ちていく

まるで 決して羽化することのない
蛹のように



妹に会うため 仕事の面接のために
薬物の更生施設から街へと向かった
8月31日の彼の物語

平穏な日常の中でひとり取り残されていく
主人公の心の機微が丁寧に描かれてて
かつ情景描写の眩いカットの美しさが秀逸。
彼が死を意識しながら目に映る何気ない風景が
とてつもなく愛おしくきらきらして見える様子を
表現されてるような感じにも思えました

雰囲気が『サマーフィーリング 』ぽい
なって思ってたら、主演の男性が同じ人。
微笑んでいるのに心が泣いてるのが痛い
ほど伝わってくる、主人公の繊細な脆さが
すごく切ないです。
監督さんも異なるし テーマも真逆的に
違うのだけど どこか悲しげで憂いを帯びた
ような 同じ空気を感じていました。
好きな作品です
NICE

NICEの感想・評価

3.7
未来に居場所はない。

ラース・フォン・トリアーの親戚ヨアヒム・トリアー監督作。なんだかトリアー家は鬱の遺伝子でも持ってるんじゃないかと思ってしまう。

ルイ・マルの『鬼火』と同じ原作の映画だが、今作の方が観客に合わせてくれているというか共感し易い。
主演のアンデルシュ・ダニエルセン・リーの本気で苦しそうな演技に胸が締め付けられる。

まあでもやっぱり『鬼火』の方が作品としては洗練されていて好き
2021年269作目(再視聴)

あなたの目の前を通り過ぎる世界。

テルマの監督の2作目。
英語字幕でしか観たことがなかった本作。
今回JAIHOで観ることが出来たので、
レビューしたいと思います。

本作は人生、幸せ、更生などのテーマを
正直で内省的な物語と主役の演技で
掘り下げた思慮深い素晴らしいドラマです。

個人的に余計なシーンはほぼ無くて、
胸にスッと溶け込んでいくように
ストーリーが展開していき、
主人公のことを知っていけます。

そして同時に主人公が
世界をどのように見ているのか、
なぜ「もう後戻りも前進も出来ない」と
感じているのかを理解させられます。

自分自身がどんな人間であろうと、
どんな問題を抱えていようと、
この世界は知らぬ顔で自分の目の前を
通り過ぎていくのです。


ここからはネタバレ含め書きます。


主人公のアンダース(34)は麻薬中毒。
物語は就職面接のために
リハビリセンターから休暇をもらい、
街に繰り出すところから始まります。

まずアンダースは旧友に会いに行きます。
旧友は妻子持ちの教授です。
二人はジョークから真面目な話まで、
長時間熱心に話をしますが、
これが繊細で切なくて惹き込まれます。
旧友がいくらアンダースのことを
大切に思っていたとしても、
二人が元の旧友の関係に戻る未来は
ないと分かってとても切ないです。

次の面接のシーンも切ない。
アンダースはまるで採用されることを
恐れているかのような様子でした。
この気鬱な様子はとてもリアルで、
憂鬱さが麻薬中毒へ引き摺り込んだのか、
逆に麻薬中毒が引き摺り込んだのかと、
考えさせられました。

オープニングのナレーションで
アンダースがそこそこ良い家出身と
分かっているので尚更心に響きます。

一刻も早くそんなアンダースの状況が、
好転してほしいと思っていましたが、
監督は悉く希望を打ち砕いていきます。
絶望への一途を辿るアンダースを、
観ている側は夜通し追いかけますが、
辿り着いた先にはまたしても
悲しい結末が待っています。

最後にアンダースはピアノを弾きます。
これが結構上手で観ている側はもしや
音楽がアンダースを変えるのではと
一縷の望みを抱きますが、
難しい一節に入ってつまずくと
弾くのを止めてしまいます。

そして…
薬物依存してないのに、こういう人生なんだが…??

カフェで周囲の会話ばかり聞いて気持ちを落としてしまうとか、自分を常に場違いなものに感じてしまうとか、こういう世の中に対する負の感覚をもとにちゃんと映画にできるんだという意味でとても感心したし共感もした。

バトルフィールド
→友人の夫婦仲を取り持つ
→売人にクスリと引き換えに渡される

『母の残像』でもゲーム(たしかスカイリム?)を父と子を取り持つものとして使っていた。
To

Toの感想・評価

-
かつての誰か、彼の目の前に現れて会話してあげてほしかった。

彼にとってこの世界はあまりにも広くて周囲のものたちはナイフみたいに彼の心をまた切り刻んで追い込んだみたいに見えた。

悪気もなく
みゅー

みゅーの感想・評価

3.0
『鬼火』と同じピエールドリュラロシェルによる『ゆらめく炎』を映画化した作品。

監督はラース・フォン・トリアーの甥であるヨアキム・トリアー。


『鬼火』と同様に、基本的に暗くて、自分自身が暗い気分の時に観るのはおすすめできない。
ただ、自分の中でどこかこの2つの映画を比べてしまうところがあって、『鬼火』の方が音楽含めて好き。

人がいない街等のカットがとても好き。
観ていて不安とか、自分だけ取り残されているかのような焦りとか、色んな感情に支配される感じ。
問題を抱え機能不全に陥っている人の心の暗い面を冷たく美しい映像で捉える、というのがこの監督の得意技なのかなと少し思ったり。知的で内省的な作風は自分の琴線に触れてしかたない。監督自身のが果たしている役割は言わずもがな大きいとして、『テルマ』『母の残像』でも撮影監督を務めていたヤコブ・イーレという人物の功績も無視できなそう。
708

708の感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

まぁ、とにかく鬱々と暗いんです。晴れない鬱。

自殺しようとしても失敗して、死のうにも死ねない。友達はみんなそこそこフレンドリーに接してくれるものの、理解者はまったくいない。せっかくうまくいきそうな就職も、自ら投げてしまう。パーティーでみんなとどんなに騒いでも、埋めることのできない心の隙間。

周りに人がいるものの、どこまでも孤独。おまけにそれに耐えられないくらい、主人公のアンデシュは繊細。繊細だからこそ、ドラッグに走ったんだろうという背景も見えます。アンデシュがとびきり若い子であれば、まだ自暴自棄になるのもわかるんだけど、それなりに年齢を重ねているからこそ、もっと違う生き方を選んでもいいんじゃないのかなとも思ったり。

ノルウェーでは9月1日から新学期ということで、8月31日という日付は夏の終わりであり、大きな節目、区切りということを暗示てるんだと思います。夏の終わりと共に、人生も終わるということなんだろうなと。

ラース・フォン・トリアーの心の闇ともまた違う闇を、ヨアキム・トリアーは抱えているんだろうなぁと思ってしまいました。
勧めてもらってから観る手段がなく長い間観られなかった映画。 JAIHOというところで観ることができました!ありがとうございます😭!!!!
孤独を映像にするのがとてもうまかった。

このレビューはネタバレを含みます

☆街のロングショットから始まるモノローグ入りのオスロ(ノルウェー)のモンタージュ→"I remember…"→三輪車を漕ぐ子どもの横移動、乗り物のマッチカット→プール(終盤に登場)、「もう会わなくなった…」→倒壊する建物のショット→タイトル

☆音と映像のズレ(旧友との別れ際に交わす台詞が起点?)

☆元カノ(冒頭の病院個室の鏡に貼られた写真(?)、ノルウェーにはいない)(?)に連絡し続ける→最後まで連絡こず

☆水辺での自殺未遂→クリーンな状態から薬を打つラスト

☆病院から街へ移動するタクシー:トンネルを抜ける際の音楽の音量変化

☆旧友を訪ねる→プルーストの引用、子どもがいて理想的な生活に見えるが、全然そうじゃないことの述懐

☆雑誌の仕事の面接→空白の経歴を尋ねられ、受け入れられそうだが、その場を去る

☆喫茶店の会話を聞く、その人物達の生活を想起させるイメージのショット→『シルビアのいる街で』?→横移動の退出ショット(音)

☆バーで連絡を待つ女性の男友達に会う→罵られる

☆消化器を撒き散らす男が先行する自転車2人乗り(相米『セーラー服と機関銃』?)、神経科医志望の女性の後ろに乗る主人公

☆8月30日の朝→8月31日の朝までの時間軸

☆プールに入るよう誘われるが、入らない(その後のシーンの先行挿入)、入水自殺未遂の呼応あり?

☆『甘い生活』、逆『捜索者』のラストシーン(閉じられた空間)

☆実際にピアノ弾く→薬を打つ、のラストの長回し

☆ジブリ的に映画に出てきたシーンの人がいないショットの映画の時間軸を反転させた連なり→最初のホテルの窓で暗転

★主人公がジェシー・アイゼンバーグ似→『母の残像』?

★おっぱい:冒頭で1シーンあり

#英語字幕

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