chan

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのchanのレビュー・感想・評価

4.3
遠い異国の地でこの映画を観られるなんて。

ジャンヌディエルマンの日常、流れるようなルーティンをひたすら眺める。3日間を約3時間で。何を喋っているのかもほとんど分からなかったけれど飽きることもなく、不思議と長いとは感じなかった。売春さえも日々のルーティンに何ともなく落とし込む、そんな1日目の全く無駄がなく手慣れた日常にうっとりしていたのも束の間、2日目、3日目と何かが徐々に崩れ始める。電気を消し忘れたり蓋を閉め忘れたり料理を焦がしてうろうろしたり、些細なミスは不思議と重なる。そして抱き上げる度に泣きじゃくる赤ちゃん。完璧なルーティンをこなすことで保たれていた平穏が、簡単に崩れる。
彼女の夢はなんだったんだろう、何が得意で、何が苦手なんだろう。どんな恋をしてきたのだろう。このような日常を、まだ少女だった彼女は想像していただろうか。
彼女の日常を見つめていると段々と、そんな考えが頭の中に広がっていっていた。
彼女のすべてを込めた鋏。もはや彼女だけではない、彼女の日常に心がピリリとなった私たちのすべても込もっていた。

美しく、そしてかなしいおはなし。
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