BOB

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのBOBのレビュー・感想・評価

3.9
2022年英国映画協会が選ぶ「史上最高の映画」第1位に選出された、シャンタル・アケルマン監督の代表作。

"If I were a woman, I could never make love with someone I wasn't deeply in love with."
"How could you know? You're not a woman."

3時間超えの長尺作品。気合で完走。

息子と二人で暮らす中年専業主婦ジャンヌ・ディエルマンの3日間に密着した人間ドラマ。限りなくミニマルな作品で、主人公が黙々と淡々と家事をこなしていく様子を、定点観察的な単調なカメラワークで捉え続ける。今日もまた代わり映えのない1日かと思われた3日目に、予期せぬ小さな不幸が積み重なる。

はっきり言って、退屈に感じる時間が長く、何度も眠気に襲われたが、最後まで観終えると、なぜこれ程までに高い評価を得ているのか、その理由が実感できた。

「映画とは、退屈な部分がカットされた人生である。」。これはヒッチコック監督の名言だが、本作はその対極にあるような作品。半永久的に続くかと思われる"不毛で退屈な時間"を体感することこそが最大のミソだった。この一回こっきりきりしか使えない意欲的なコンセプトを、この時代に取り入れたことが素晴らしい。現代になって再評価が進んでいるのも頷ける。シャンタル・アケルマン監督25歳時の作品だという事実にも驚くばかりである。

作品の途中から母親と一緒に鑑賞したのだが、"私の日常も傍から見ると、こんな風に見えているのかもしれないね"と言っていたのが忘れられない。個人的に"史上最高の映画NO.1"はさすがに言い過ぎなんじゃないかと思うのだが、この作品の真の価値を理解できるのは似たような経験を持つ女性だけなのかもしれない。

閉塞感、やけくそ感、無気力、無機質、声にできない不満やストレス。第一声までに15分。

定点カメラ、固定アングル、長回し、最小限の台詞、自然音のみで伴奏なし、閉塞感のある構図。1、2日目と3日目を、同じアングルから撮られたシーンで比較すると、同じようで全く違う。

じゃがいもの皮をむく。肉をこねる。コーヒーを淹れる。ベッドメイキングをする。カフェに行く。男を招く。

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