陰鬱な青黒画面。スタンダード。
カメラのシャッターを切るように、目まぐるしくショットが変わりながらポンポンと話は進んでいく。禁欲的なカウンセリングの女は、末期癌の変態写真家との接触を通じて、自我を解放していく。そのテンポは観ていて心地よかったが、途中からどうもだれてくる。というのもこの映画には無駄が無い。無駄無いということは遊びがないということであり、つまりはユーモアがないということである。とにかく台詞があかんかったと思う。説明台詞とリアクションしかない。本編の筋書きからそれる無駄話や気の利いた比喩表現が一つでもあれば、もっと潤いのある映画になったんじゃないかと素人ながら思った次第。とはいえ黒沢あすかはかなり良かった。素晴らしい。全体を通して映画も悪くなかったが、本編に幾度も使われる写真の質の方がすこぶるよかったと正直思った。