そーた

キャプテン・フィリップスのそーたのレビュー・感想・評価

キャプテン・フィリップス(2013年製作の映画)
4.0
責任感か、正義感か

トム・ハンクスって誰しもが認める演技派俳優ですよね。

だからこそ、こういう実話ベースの映画で求められるリアリティーを実現するには、正に適任です。

人の上にたつリーダーの責任感。
そして、リーダーだからこそ必要になる正義感。

この責任感と正義感。
人間にとってどちらが先なのでしょう。
非常に興味深い映画でした。

ソマリア沖でコンテナ船が海賊にシージャックされた実際の事件を基に、その船長と海賊との攻防を描いた作品。

監督ポール・グリーングラスのアクションシーンへのこだわりはボーンシリーズを見れば瞭然です。
過度ではなく、スピード感や鋭さを意識したリアルなアクション。

実話を基にしたこの映画との親和性は非常に高かったようです。

派手なアクションはありませんが、辟易するほどの緊迫感を最後まで持続させる。
その演出はさすがの一言。

また、その緊迫感を支えているのが、
海賊役のバーカッド・アブディ。
ソマリア系アメリカ人なんですって。

本当の海賊に見えてしまうくらいの鬼気迫る演技。
英国アカデミー賞の助演男優賞に輝きました。

この海賊を相手にコンテナ船の管理者でしかない船長が、あの手この手で海賊に抵抗します。

並々ならぬ知力や機転の効いた判断力で海賊との緊迫した駆け引きを行っていきます。

その根底には部下である船員を守ろうという責任感がある。
そして、それが時折正義感のようにも見えるんですね。

責任感と正義感って正直者見分けがつかないんです。
それは、行動を起こした人の動機次第なんです。

恐らくこの船長は責任感で動いているんだと思います。

でも、彼が海賊に拉致されたとき責任感だけでは潰されてしまうはず。

そこからは正義感の領域です。
でも、純粋な正義感なんて恐らく普通の人間がなかなか持ち得ない。

だから、責任感によって正義感を心の底から引っ張りあげているんだと思うんですね。
責任感が正義感を裏打ちしてるわけです。

これが、相当な無理を強いているのでしょう。

それを痛烈に感じたのがラストの医務室のシーン。

ここにトム・ハンクスの演技派といわれる由縁を見た気がしました。

責任感や正義感云々よりも、そういった後付けの概念を取っ払った一人の人間がそこにいました。

感動と言うより共感の涙。
それが頬を伝うのは演技派の魂を見せ付けられたからなんだと思いました。

責任感や正義感を一人の人間として持つことの、いや持たないといけないことの辛さや重圧感がリアルに描かれていた良作です。

人間の強さと弱さ。
僕には弱さしかないのかもしれません。
そーた

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