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飛べ!ダコタのodyssのレビュー・感想・評価

飛べ!ダコタ(2013年製作の映画)
3.0
【柄本明村長は昭和天皇である!】

第二次大戦後まもない佐渡島の寒村に、英国の軍人を載せた中型飛行機が不時着。村民たちの対応は・・・・というお話です。

実話をもとにしているということですが、現代的な脚色はそれなりに施されているのでしょう。ヒロインの若い女性(比嘉愛未)がまっさきに飛行機に近づいていくところなど、どうかな。連合軍の軍人には若い女は近づかない、というのは当時は常識だったはず。彼女が売春婦なら別ですけどね(笑)。

まあ、その辺はともかくとして、こないだまで敵として戦っていた相手をどう遇するか。結局はそれなりに協力して、飛行機が再度飛び立てるように浜辺に滑走路を作ることになります。村民たちは総出で働いている。

日本人は何やかや言ってもお人好しだし、また戦争に負けているから連合軍に逆らうと後が怖いということもあったでしょうけど、双方の友好ムードが徐々に形成されていくところは見どころと言えるでしょう。

無論、戦争の影を引きずっている人間もいる。ごたごたもそれなりにある。けれども、平和が来た以上、対応も平和的にというところは実話そのままでしょうし、それは悪くない。

ここで、村長を演じる柄本明が、私には非常に印象に残りました。柄本明も色々な役をやってきたけれど、この村長の役はその中でも当たり役だと思う。私は見ていて、不敬になるかも知れませんが(笑)、彼が昭和天皇に見えたのです。

そう、戦争に負けて進駐軍を迎え入れなくてはならなくなったときの昭和天皇の立場。それが、ここで予期せず英国軍人を迎え入れざるをえなかった村長の立場に重なっている。そして、小さい村であるが故に、村長の態度や仕事ぶりはきわめて明晰に描かれています。天皇陛下も大変だったでしょうが、村長さんだって大変だった。上に立つ者の大変さ、それがよく描かれた映画になっていたのでした。
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