大叔母が書き残した回顧録。そこには戦争の最中に小さな家で起きた事件が書かれていた。
ちょいちょい青年が大叔母に「当時はそんなはずがない」と言うわけですが、これがこの作品のテーマなんだと思う。
戦争の足音が聞こえていても、それは当時の人の日常にはそんなに届かない。むしろ当時の女性の自由のなさの方が小さなおうちの大きなテーマだった。それがだんだんと小さなおうちの事件と大きな社会のうねりとが混ざっていく。
そこにあるのは人の混沌とした思い。歴史は事実の羅列として語られがちだけども、本当は無数の人たちの人生の重ね合わせで、単純に割り切れるものじゃないわけです。
先の戦争について、そういうものを私達が直に聞ける時間というのはもう本当に僅かしか残されていない。この映画を見るとそういうあせりが強烈に沸いてくる。
そういうテーマなのでこの映画の主人公は語り部であるタキちゃんだと思う。黒木華は本当に適役だったと思う。
普段はいい奥さんであるのに、ふっと一人の女性になって恋にパニくるギャップを魅せた松たか子も素晴らしかった。