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ANON アノンのJIZEのレビュー・感想・評価

ANON アノン(2018年製作の映画)
2.7
記憶が検問されるようになり犯罪が激減した代わりに個人の匿名性が失われた近未来を舞台に起こるはずのない殺人事件を解明する事件の全貌に迫ったSFスリラー映画‼︎おもにレトロ未来社会を反映させたような『TIME/タイム(2011年)』を彷彿とさせる。最先端のデジタルな世界を縦軸に記憶と記録をめぐりそれぞれの思惑が交錯する。主演のアマンダ・セイフライド演じるゆいいつ個人を特定されない"記録のない女"として作品のミスリードの役目を果たしていたのは見所でした。いわゆるおおざっぱに主人公扮する追跡者とそれを解明する事件の本質が見え隠れする反面で語り口はだいぶ間接的な緩い描かれかたがされてるためサスペンス映画のような謎解きによるツイストを盛り込んだカタルシスや真相に辿り着いた感触が起伏然りだいぶ薄い。肉体的な生々しいベッドシーンが合間合間でデフォルメされ映し出されるのも本来動物としてのあるべき象徴なのかも。また監督がSF映画の名匠アンドリュー・ニコルという点も作品に刺激的なスパイスを放っていたように思う。すなわち『ガタカ(1997年)』や『ドローン・オブ・ウォー(2015年)』などマイノリティの精神に深く訴えかけつつも近未来の病理や生身の薄皮をめくった人間の本質をえぐっていたように思えました。人物の主観映像や巧妙にカメラワークが切り替わる感じは工夫がこなされている。殺人事件の真意というより歪な世界観の枠組みそのものに重点を置いたそんな作品。全体的に先駆的な時代性に相反して語り口が普通かつ娯楽描写の魅せ場が弱かったためエンタメ的に消化不良ではあるが時代が進んだまた何年後かに見返したい実験的な作品でもあった。
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