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悪の法則のtakのレビュー・感想・評価

悪の法則(2013年製作の映画)
2.8

 アメリカとメキシコの国境を挟むヤバイお話の映画はこれまでにもたくさんあった。スティーブン・ソダーバーグ監督の「トラフィック」あたりが代表作だろう。日本にいる我々も、こうした映画を通じてアメリカ南部じゃ日常的にこんな出来事が起こっているのだな、と異国の現実にショックを受けざるを得ない。それがリアルワールドではますます深刻化しているのだな、ということを映画「悪の法則」では思い知らされる。 美しい恋人と結婚を決めたばかりの弁護士(ファスベンダー)は、友人を介してガッポリ儲かるヤバイ仕事をしようと思いつく。ところが、ひとつの誤解が胴元を怒らせる結果となり、関係者一同が追われる羽目になってしまう。映画はその顛末を延々と2時間見せつけるのだ。ハッキリ言えばお話はそれだけ。言わば、悪事に手を染めるとたいへんなことになりますよ、というお説教映画だ。

 スタアキャストにつられて映画館に行った人々はガッカリしたのではなかろうか。ペネロペちゃんは純で彼氏思いの女性を好演してるが話半ばで姿を消す。仲介人を演じたブラッド・ピットも決してカッコいい役柄ではない。主人公マイケル・ファスベンダー(「プロメテウス」に続いてリドリー・スコット監督作出演。お気に入りなんだろか?)は、映画後半はビクビクしてベソかいて絶叫して・・・。唯一最後までカッコいいのは極悪ビッチを演じきったキャメロン・ディアス。確かにイッちゃってる役柄だが、彼女が「車としたい」と言ってフロントガラスに股間を押しつける場面は、劇中のハビエル・バルデムと同じくもはや唖然とするしかない。リドリー・スコット監督はエロを撮らせたらダメなのかなぁ。映画冒頭シーツの下でイチャつく主人公とペネロペちゃんにしても生々しすぎて、ドキドキできなかった。

 麻薬組織の報復の凄まじさがさんざん語られるが、それが人体切断に執着しているものだからますます後味が悪い。観ているこっち側も組織はそんな非人間的なことをするのか・・・と聞かされた後だから、クライマックスは主人公のもとに送り届けられるDVDディスク1枚を見るだけでゾッとする。この場面の物言わぬ演出の凄みはさすがだと思った。でももっともっと怖かったのは、弾痕と血に汚れたトラックを手際よく修理、掃除する家族たちの場面。「パルプ・フィクション」には"掃除屋"というプロが登場したが、現実世界ではそれを貧しい家族がてきぱきとこなしている・・・。怖っ!!それを思うと国境を挟んだクスリがらみの問題がいかに根深く深刻なのかが思い知らされるではないか。

 そんなこんなの2時間。ただの儲け話だと思ってヤバイことに手を染めるとこうなるんだよ、とひたすら巨匠のお説教を聞いてる2時間。とにかくこんなに後味が悪い映画を観たのは久しぶり。それを社会的啓蒙だととらえてお勉強の2時間ととらえるか。安易に観ると殺人カタログみたいな台詞の数々がきっとあなたのトラウマになる。それが嫌ならこの映画に手を出さないこったな。ヤバイ儲け話には危険と隣り合わせの魅力があるのかもしれないけど、この映画にもトラウマになるよな危険と隣り合わせのスタアの魅力が添えられている。うっかり手を出すと・・・危ないぜ。
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