どうひいき目に見てもカタギとは思えない実業家(ハビエル・バルデム)の弁護士(マイケル・ファスビンダー)は恋人(ペネロペ・クルス)との結婚を控え大金が必要だった。そこで、実業家に紹介してもらった麻薬ディーラー(ブラッド・ピット)を手を組んで麻薬ビジネスで一攫千金をもくろむが、お約束のごとく運命の歯車が狂って、破滅へ向かっていく。
現代アメリカを代表する作家、コーマック・マッカーシーによる脚本は容赦なく無慈悲だが、多くのアメリカ人のおつむでも理解できるようにしたのか実に分かりやすい内容で、「難解」という公開当初の評判はまるで嘘のよう。リドリー・スコットもスピードはあるが抑制を効かせた演出で静かに恐怖を潜行させていくのだが、物語が動き出したとたんに全てが「説明」になってしまい、予想の範囲を超える展開はほとんどなく、後半1時間は答え合わせの時間と言ってもいいだろう。「もうここで終わるな」と思えるシーンがいくつもあるのは脚本が悪いのか演出の設計ミスかどちらかでは?
豪華キャストのなかでも、ハビエル・バルデムの存在感が圧倒的。小さな欲に目がくらみ、女と享楽に目がなく、人懐っこい。そんな悪役になりきれない人間臭さが素晴らしい。彼がいなければ前半すら持たなかったのではないか? 実際、映画がつまらなくなるのは彼が物語から退場してからだった。物語からの退場という意味ではブラッド・ピットの結末も予想通りで、蛇足観ありあり。彼はこうした脇役に徹したほうが光る役者だが、その扱いが主演級なのが残念。
賛否ある邦題(現題は「ザ・カウンセラー(弁護士)」)はもう一人退場すべき登場人物が消えてこそ初めて意味のあるものになるのだが、結末はそうではないので中途半端になってしまった。いろいろもったいない映画。テレビ局の作るつまらない2時間ドラマにはもう飽きた!という人にはいいかも。