クシーくん

俺たち喧嘩スケーターのクシーくんのレビュー・感想・評価

俺たち喧嘩スケーター(2011年製作の映画)
4.2
「俺たち」シリーズという、恐らく知る人ぞ知るシリーズがあるらしい。
ウィル・フェレル主演の特に関連性のないコメディ映画群をこう呼ぶらしいのだが、そもそもシリーズ作品を一本も観ていなかった。
近年ではウィル・フェレル主演作以外の全然関係ないコメディ映画にも「俺たち」を冠した邦題がつけられるようになったらしい。本作もその無関係な作品に該当する。
邦題をつけた配給会社がまともに仕事をしなかった良い例だ。つくづく残念でならない。
適当なやっつけ仕事でつけられた邦題からは想像出来ないほどいい映画である。

医者の息子として生まれ、ゲイの兄も優秀な医者になったが、自分自身は滅法喧嘩が強いことしか取り柄がなく、しがないバーの用心棒をやっていたダグ。ある日観客席に乗り込んできたアイスホッケーの選手を叩きのめしたことをきっかけに「殴り屋」として選手に採用された。
チームの用心棒になったダグはラフラムというかつての花形選手、今は文字通り潰されて故障し、落ちぶれて腐ってしまっている元エースの用心棒となり、マイナーチームを勝利に導く…という王道もの。

アイスホッケーって危険だなあ…という漠然としたイメージしかなかったが、「エンフォーサー」という乱闘要員がチーム内に確保されているとは知らなかった。場合によっては乱闘も勝つための戦略の一つで、観客もそれを望んでいるのだ。凄いスポーツだな本当。

暴力担当の選手という役目など当然両親からは反対される。
最後まで息子が見つけた新しい道を理解し、安易に受け入れるようなシーンがないのもまた良い。自分の子供が危ない目に合う仕事など親が許容出来る筈もないし、両親の言うこともあながち間違いではないからだ。ダグの仕事を単なる「喧嘩」としてしか認められず、お母さんに至っては「趣味」と言い切ってしまう。酷い。酷いけど仕方がない。決して両親と不仲な訳ではないのがまた悲しい。

その分親友のパットがフォローしてくれる。
「気にするな、今日のお前は羽ばたいてた。吐くまで飲もう」Fワード連発で口がクソ悪いけどダグには良い友達がいる。兄も雰囲気や方向性は正反対だが弟の良き理解者だ。チームの皆もダグの一本気な人柄を愛し、受け入れる。

それはダグが心の底から純粋で、良い奴だからだろう。ラフラムから「お前なんか選手じゃない」と言われ、大先輩の殴り屋から「ホッケーをやろうとするな。お前は喧嘩屋だ。いずれ後悔することになる」と言われても決してへこんで折れたりしない。最初はロクにリンク上も滑れなかったダグはチームの役に立つために必死に努力する。純粋で、不器用だが強くて優しい。最高の男なのだ。ストーリーはあっさりしてて単純なんだけど、妙に刺さる。

ラストはダグの大先輩で憧れだった殴り屋ロスとの一騎討ち。テンション上がるのと同時に笑ってしまった。ダグの、というかクライマックスの見せ場がアイスホッケーのシーンというよりは完全にロッキー。

楽曲のチョイスというか使用するセンスは大分微妙。ここでその曲使う?みたいな。この辺が一番B級臭かった。
バスの床に穴が開いててそこからオシッコするのは衝撃。昔のバスがそうだったのか、それとも今でも寒い地域のバスってああなの?
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