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世界一美しい本を作る男 ―シュタイデルとの旅―のodyssのレビュー・感想・評価

3.0
【造本家、そして高級書籍の世界】

シュタイデルの名は全然知らなかった。
しかし造本家という職業はこういうものか、と納得するには悪くない映画だ。

何しろ忙しい。ふだん住んでいるのはドイツだが、フランスや、大西洋を越えて米国への出張。電話で打ち合わせするより実際に顔を合わせてやったほうが手っ取り早いというのはうなずける。

扱う書物は、さすがに高級。一冊1万ドルで限定300部、なんて写真集もある。美術品として価値が出るから、と言って顧客に買わせる。美術品と同じ扱いなんだね。うーん、本は読むもので投資の対象とは全然思っていない私とは住む世界が違うな。

ノーベル賞作家ギュンター・グラスが出てくるところも見どころ。彼の代表作『ブリキの太鼓』は映画化もされているから映画ファンにもおなじみだが、原作の小説が出版されて半世紀ということで、記念版を出すことになり、シュタイデルの出番となったらしい。

ともかく、こういう世界もあるのだということを知るためには、見て損はない。
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