ひろぱげ

事件のひろぱげのレビュー・感想・評価

事件(1978年製作の映画)
4.1
神奈川県で起きた若い女の殺人事件。逮捕されたのは被害者の妹と同棲していた19歳の男。彼の裁判が始まる。

裁判と回想シーンが交互に繰り返され、物語が進むにつれて、若い男女の恋のもつれとか、姉(松坂慶子)の不憫さ、妹(大竹しのぶ)の魔性さ、男(永島敏行)の不甲斐なさが解き明かされ増していく作りが素晴らしい。

裁判長:佐分利信
検察官:芦田伸介
弁護人:丹波哲郎
証人たち:西村晃、北林谷栄、丹古母鬼馬二、森繁久彌、渡瀬恒彦

・・・濃すぎる!!面白すぎる!!
個性豊かで芸達者な役者たちが演じる証人を、芦田が尋問すれば、丹波が時に声を荒げ、時にカマかけたりしながら鮮やかに反対尋問する。佐分利信はやっぱり時々何言ってるか分からないのだが(笑)、「裁判所も本当の事が知りたいのです」と言って中立を保ちつつ証人たちの新たな証言を引き出していく。上手い。

あらためて、松坂慶子演じる姉が可哀想すぎて切ない。大根演技がこの場合上手く作用している永島敏行は、朴訥としてる割に結果的に二人の女(姉妹)を手玉に取ってしまった悪い男だし(しかしこいつは所詮まだまだ子供だったんだということが、接見のシーンで分かるのだった)、大竹しのぶに至ってはファムファタールすぎて恐ろしいくらいだ。ラスト、橋の上ですれ違った渡瀬恒彦(お姉ちゃんの元ヒモのチンピラ)に「お前、おぼこい顔してるけどいいタマだなぁ」と言われ、「ふふふ」と不敵な笑みを浮かべながら「あんたみたいにウソつきじゃないわ」とかぬかしやがるの。ホント怖い。

同じ野村芳太郎監督の裁判ものといえば、みんな大好きな(もちろんおれも大好物な)「疑惑」があるが、映画としてはあちらほど派手ではないものの、裁判の展開の面白さという点では本作の方に軍配をあげたい。とにかく日本の法廷劇の傑作である。
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