マリオン

るろうに剣心 伝説の最期編のマリオンのレビュー・感想・評価

4.0
和月伸宏による人気漫画の映画化第3作目。前作の京都大火編で匂わされたもう一人の自分である敵との対峙という宿命的ダークさがついに表面化し、自分の存在の価値を見定めるというきちんとした命題をもとにラストバトルにすべてが集約されるというまさに圧倒的なラストだった。すべてのノイズをチャラにしてもいいと思えるほどの怒涛の勢いだった。

京都大火編でもすごい殺陣やアクションも見せてくれたが京都大火編がウォーミングアップだったと言わんばかりの勢いのアクションを見せてくれる。師匠比古清十郎との訓練で己の価値を再び悟り、かつて血に囚われた自分の写し鏡である四乃森蒼紫や瀬田宗次郎、志々雄真実との戦いに挑む。四乃森蒼紫とのバトルでは順応無尽に動き回るナイスファイトを見せてくれるがその後の志々雄真実とのバトルではなんと志々雄真実が緋村剣心、四乃森蒼紫、相楽左之助、斎藤一の4人を相手にして壮絶な殺陣を見せつけ、しかも彼らを圧倒するのだ。このラストバトルの為に今までのアクションがあったかのような壮絶さに思わず息を呑んだ。そしれ見終わった後この映画は剣心がかつての自分を断ち切る物語でもあり志々雄真実のための物語だったのだと気づくのだ。なかなかしっかりとケリを付けたラストではないだろうか。

だが明らかに原作とは違うというか愛のない改変や扱いが原作を見ていない自分でも察してしまう部分が多いと前作よりも感じてしまうのも事実だと思う。前作であれほど強そうな刺客として出てきた十本刀のあっさりとした扱いや志々雄真実が緋村剣心に固執する度合いが強くなるほど国盗り感が薄くなる話運びなど、なんだかなぁと思う要素が結構多い。四乃森蒼紫のキャラもやはり前作で意味不明な設定にしたせいでかつての血に囚われたもう一人の自分という重要な存在感に水を差してしまうしラストバトルへの参戦もとって付けた感が否めないのだ。正直せっかくかっこいいキャラクターなのに勿体ない。あと相楽左之助の扱いもそんなに愛のある扱いをしていないと思う。もっと剣心とのバディ感が欲しいかった。別に原作通りやれとは言わないけれどもっとどうにかならないのかなぁという部分が多い。でもこんなマイナスポイントすらラストバトルの素晴らしさでチャラにしてもいいと思えるレベルのものに感じた。

そして今回も役者陣の素晴らしいアクションがすごい。福山雅治の腰を低くした一発一発の打撃の重さが出てたし、何より志々雄真実役の藤原竜也のすごみ、アクションは前作をしのぐ。これで今年の藤原竜也成分は十分に満たせることだろう。四乃森蒼紫役の伊勢谷友介の憎しみを低く唸るような声で表現するのも修羅のようなすごみがあって大変よかった。もちろん前作からの登場人物や3作すべてに登場する役者すべてがハマっている。個人的に斉藤一役の江口洋介は3作通じてかっこよくて大好きだ。

本当にこの映画はキャスト、音楽、アクションすべての歯車がキチッとハマった非常に運のよい映画だったなと総括して思った。漫画原作の実写化がこれからもこの映画のように見ごたえのある映画になっていけばいいと願うばかりだ。
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