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るろうに剣心 京都大火編のmofaのネタバレレビュー・内容・結末

るろうに剣心 京都大火編(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【もう少しの残忍さを】

上映時間が2時間超えと、長時間だったが、
退屈せずに楽しめた。
 とにかく、佐藤健が、ハマリ役である。
美しく、しなやか。
優しく温厚な部分と、クールで厳しい部分の共存。
それによって生まれる、戸惑い。苦悩。
 原作は未読だけれど、剣心は佐藤健以外、思いつかない。

そんな佐藤健以上に素晴らしかったのは、
藤原竜也演じる志々雄。
 包帯だらけでありながら、その声音と、鋭い眼光で、
志々雄の奥深い闇と、残忍さを演じていた。
 一歩間違えれば、あの姿形は、この映画にそぐわなかったかも知れない。
それこそ、漫画の世界を、実写で描く難しさだろう。
 そうでありながら、全くの違和感を残さなかった。
藤原竜也の舞台俳優ならではの底力を見せ付けられた感じだ。
 脇をかためる俳優陣も、この映画の価値を下げることは無かったが・・・。

ただ、2・3点、文句をあげるとするならば、

一つは、伊勢谷友介演じる蒼紫。
 とても、存在感の演技をしていたけれど、とにかく、「ひつこい」
口を開けば「抜刀斎はどこだ」の一点張り。
 彼が、それほど、抜刀斎に恨みを持つ理由も、イマイチ納得はいかないし、
何より、仲間であったはずの、老人(名前忘れた)と争わないとアカンわけ?
 単純に言えば、仕事がなくなったから、それは抜刀斎のせい?
・・・で、恨みを持ってるって事でしょう?
 なんか、それだけの事で、あそこまで、執拗に恨むものなの?

 それこそ、どっかの橋の上で、
「抜刀斎はどこだ・・・!!!」って、アンタ、誰に聞いてんのん??

・・・と、もの凄い違和感だし、
あまりにも、場違いな存在感に、唖然とし、笑いを誘う。
 伊勢谷くんの熱のこもった演技も、こんな扱いだと、勿体ない。

 
そして、もう一つ、「は?」と思ったのは、
意味のわからん関西弁。
 どないかならんかったんかしら。
 あれは、コメディ要素を取り入れるつもりやったんかな・・・。
あそこだけ、見事、アニメになってた。
 それが、狙いだったのかな。
たまに、海外の映画で出てくる日本人のイメージに、
「日本を馬鹿にしとんのか?」って思うけど、
これは、「大阪人を馬鹿にしとるんか」と、若干、大阪人としてはカチンとくる(笑)

 いやいや、全体的に、そういうアニメ要素あればいいんだけど。
他の俳優さんが、アニメ要素を飲み込む演技をしてるからか、
ここだけ、非常に浮いて見えちゃうんだよね。


 というのは、小さな不満だが。

私が、この映画で1番の失望感を感じたのは、最後のクライマックス。
薫さんが囚われて、
彼女を傷つけようとする事で、志々雄は、剣心にひそむであろう、
人斬りの本能を呼び覚まそうとする。
 この時の、藤原竜也、良かった~!!
 あの残忍な感じと、ちょっと、イッテル感じの声。

ああああ・・・・剣心が目覚めてしまうかも~・・・・とドキドキする。
 
薫さんに一歩でも触れたら、剣心は、爆発してしまうかも知れない。

 ・・・・・その瞬間、びっくりする事に、
薫を海に放り投げた!!!

ええええええ~!!!!
あんなに、煽っておいて、海に放り投げるのん???
 
そりゃ、剣心飛び込むやん。

 あれほど、藤原竜也の演技力で、剣心を追い詰めてるのに、
それに、剣心が呼応する事もなく、海に飛び込んで終わりって。

 あくまで、私の希望なんだが、
私は、あそこで薫を殺すか・・・どないかして欲しかった。
 殺して、海に放り投げる。それでも、いいんです。
意外に傷が浅くて、助かったでいいから。
 薫さんが傷つけられた瞬間の、剣心の表情が、この映画の最大の見所だったのに。
なんて、勿体ない・・・・。

 つまり、甘いのである。
それは、この場面でだけでなく、蒼紫が、あれほど容赦のない男だと設定しておきながら、
剣心の友人も、女医さんも、殺さないワケですよ。
 
志々雄も同様で、あれほど、「何するか分からんで~」という不気味さをかもし出しておきながら、海に放り投げただけ??
 志々雄の性格からいうと、目の前で、薫をいたぶり、
逆上する剣心を見たい・・・と思うだろう。
 それこそ、佐藤健と、藤原竜也の演技が光る場面になったんじゃなかろうか。

 
この甘さや優しさが、後編への、「観たい!!先がキニナル」という感情を欠如させてしまうのである。

 先はどうなるか知らないが、剣心も、薫さんも、海にさらわれながら、
絶対、死なないという安心感。
 奇跡的に助かるパターンに違いない。
それを予想できてしまうほど、勿体ないことはない。

 原作があるから、難しいところもあるだろうけど、
ああああ・・・・藤原竜也の演技が勿体なかったなぁぁぁぁ~と、
思わずにはいられなかった。

 それだけに、あと少しの、残忍さが欲しかったところである。
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