まぁ郎

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴのまぁ郎のレビュー・感想・評価

4.5
1番好きな映画監督ジム・ジャームッシュの、待望の最新作を観賞してきた

どこから説明しようか...そんなことにも悩むぐらいのカッコよさ

今回は吸血鬼のラブストーリーと聞いて、えっ?!どうした?らしくないぞと思いきや

そんなコテコテのラブストーリーをジム・ジャームッシュが撮るわけもなく
ラブストーリーではあるが、ジム・ジャームッシュお得意のロードムービーでもある

時代に逆流するような拘りを持ち続けるアダムと、時代の流れを取り入れつつも自分らしさを持つイヴの恋の行方
レコードを流すところからこの物語は始まる訳だが、これは作品のテーマへの伏線になっている

変な誇張もなく、主人公がヴァンパイアであったとしても、何気ない日常を描き続けるジム・ジャームッシュの特徴が今回もしっかりと活きていたように思う

前作「リミッツ・オブ・コントロール」から、アメリカ以外も作品の舞台にし始めたジム・ジャームッシュ

デトロイト、タンジールのロケーションが特に素晴らしい
作中は殆ど夜のシーンだが、ドライブのシーンで映るデトロイトやタンジールの街や建物、そのひとつひとつのシーンが物凄く印象的だった
それらを切り取って写真展を開きたいぐらい
ジム・ジャームッシュの手にかかると、何気ないシーンでもより美しく感じる、それはまるでマジックのよう
建物や街の撮り方に、彼なりの拘りを物凄く感じる

そして、今回も挿入歌含め全ての音楽が最高!と思ったら、ジム本人も音楽を担当していたようで

もう一つ印象に残ったのが、浮世離れしたアダムの部屋がアンティークだらけで、めちゃくちゃお洒落
あんな部屋に住みたいもんだ

イヴ役はジム・ジャームッシュの最近のお気に入りティルダ・スウィントン、知的そうでこの人好きだわ〜

アダム役のトム・ヒドルストン、マーロウ役のジョン・ハートもいい味出してたけども、エヴァ役のミア・ワシコウスカに持ってかれちゃってたな

ミア・ワシコウスカ、ジム・ジャームッシュにも認められたか!
ますます今後が楽しみな女優

今回の物語は吸血鬼のラブストーリーではあるが、テーマとしては現代批判を含んでいるように思えた
拘りもなく、時代に流される現代人を“ゾンビ”と揶揄し、拘りを持つ数少ない吸血鬼が絶滅に追いやられている
そう、このテーマが最初のレコードのシーンから既に謳われている

時代に流されることなく、拘りを持ち続け、夜型の生活を送る、いつの時代の詩人や音楽家などの所謂アーティストたちは、まるで吸血鬼のようだと作品を通して思えた

この作品は、そんなアーティストたちにジム・ジャームッシュなりの敬意を込めた作品なのかもしれないと観終わってふと思った

感覚を研ぎ澄ませて、センシティブに感じるがままに感じれば良い
今回も期待を裏切らなかったジム・ジャームッシュ、お好きな方はぜひ劇場へ
まぁ郎

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