マリオン

青天の霹靂のマリオンのレビュー・感想・評価

青天の霹靂(2013年製作の映画)
4.0
生きる希望を失いかけた売れないマジシャンの男が青天からの突然の稲妻によって両親が生きている時代にタイムスリップしてしまうドラマ。芸人監督映画と聞いてどうせ大したできじゃないなんて舐めた態度で見ていたらこれがまたよくできた映画に仕上がっていてすごく驚いたし泣かされてしまった。どこかで聞いたことがあるベタなストーリーだけどきちんとその面白さが生かされているし気の利いた演出も多いと思った。

驚かされたのが初監督とは思えないほど映画的な演出や気の利いた演出が多く見られること。紙で作ったバラや500円玉、トランプなど手品で使う道具がきちんと伏線になったり細かな登場人物の描写になっていたり、説明ゼリフなしで主人公のついてない具合や、父親と似ている描写をしっかり描いている。またお笑い芸人が陥りやすい漫才のツッコみに頼ったテレビ的な笑いもなく映画的に面白いシーンになっている。ずれた会話の軽妙さやアクションの天丼など上手に扱っているしそのアクションの天丼が感動のシーンでも生きてくるという使い方には思わず唸った。マジシャンのステージも回を重ねることにみるみる面白くなっていく過程やロジックもきちんとあるし、劇団ひとりの中国人ギャグもきちんと生かされているのもいい。きちんと積み重ねられた演出によってこの物語がすごく輝いて見えるのだ。しかもこれを96分で納めてしまうとは…

ストーリーはベタで直球。後半に知る両親の秘密や父、母とそれぞれと気持ちが通じ合うシーンはいいセリフ回しや役者の演技の力によって素晴らしいシーンであったと思う。主人公にとって父、母の存在とは何なのかを知り、そこからまた彼が輝きを取り戻す。佐藤直紀の音楽の主張が激しい気はするがここはしっかり感動させてくれるだろう。のび太のおばあちゃん回を彷彿とさせる雰囲気があった。ただ母との会合のあとに急に河川敷で父との会合に移るのはちょっとノイズに感じてしまったのでちょっと話があると言って誘うシーンが欲しいかなと思った。

大泉洋、柴咲コウ、劇団ひとりの演技もよかった。最初大泉洋がマジックをするときトランプを扱う手元しか映らないので、不安になったが最後にはきちんとマジックをしていたので僕が抱いた不安は違っていたようだし、劇団ひとりもこんなにエモーション溢れる演技ができるのを今回初めて知ることができた。

劇団ひとりがここまでの映画が作れるということがまさに青天の霹靂だった。いやぁほんとびっくりした!誰とはあえて言わないが一部の芸人監督は彼の爪の垢を煎じて飲むべきだよ。
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