りゅっくサック

渇き。のりゅっくサックのレビュー・感想・評価

渇き。(2013年製作の映画)
3.6

登場人物全員クズ、感情移入・共感0の劇薬ムービー。
皆殺しの天使(1962)ならぬ皆殺しの悪魔たち。

今見ると今や人気女優の小松菜奈、当時仮面ライダー鎧武出演中の高杉真宙や、橋本愛、二階堂ふみ、青木崇高、オダギリジョーと
老若男女、端から端まで豪華キャストがバイオレンスに罵り合ってるのに驚愕。

妻夫木聡が終始ニヤけ顔の刑事浅井をすごく楽しそうに演じてた。

過剰な暴力、セックス、ドラッグ描写をコーティングするポップな演出。
音楽も多彩で古今東西の名曲や、アイドル好き的にはでんぱ組.incがドラッグパーティーシーンと合わさってサイケな怪電波に変貌していて
CMディレクター中島哲也のセンスの妙は凄いなぁと。

時系列と語り部をシャッフルし真偽不明な情報を織り交ぜる辺り、ユージュアル・サスペクツ(1996)を思い出した。
バイオレンス&ポップはタランティーノっぽい、と思っていたらRHYMESTER宇多丸さんも同じ事を仰っていた。

本作で長編デビューの小松菜奈ちゃんは凄く上手いわけじゃないけど
いい意味での拙さみたいな物が加奈子の「腹に一物!いや二物三物抱えてんなぁ…」というミステリアスさ、本音を言ってなさとマッチしてたと思います。
いつの間にか「とんでもないクズ!!らしいけど…こんな可愛い子がそんなわけ…」となってしまうから小松菜奈ちゃんの可憐さマジック恐るべし。

図らずも藤島は文字通り“渇望”する娘を追うことが自分へ罰を与えることに
更には抜け出せもせず、救いもない無間地獄に落ちていくことになっていく。

可愛さ余って憎さ百倍、愛憎は表裏一体で1番怖いのはやっぱり人間だなぁと。
各人物たちの末路に「あぁ…それはもう殺す(or死ぬ)しかないよなぁ…」と思うほど「ざまぁ!」も「あぁ良かった…」も無い。

ただ何だろうこの…
グランドセフトオート的な自由度高い海外ゲームで特に意味もなく、銃ぶっ放して暴れるプレーだけした時みたいな、この虚しさは。。。
終盤に向けて2つの時系列が綺麗に収束していくのに、ゆっくりと感情が鈍化していく感じがある。

ナイフで皮ふを貫かれ内臓をズタズタに切り裂かれる。
強烈な印象をバイオレンスに刻みつけられる、という意味では確かに凄い作品だと思います。
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