イチロヲ

愛の新世界のイチロヲのレビュー・感想・評価

愛の新世界(1994年製作の映画)
3.5
劇団員とSM嬢の二面性を抱えている女性(鈴木砂羽)が、偶然知り合ったホテトル嬢(片岡礼子)と一緒に共同体を作り、表と裏の世界を渡り歩いていく。島本慶&荒木経惟のエッセイを原作に取っている、エロティック・ドラマ。

端的に言うと、「肉体と精神の乖離状態」を描いている作品。性産業に関わる女性の生き様を克明に描くことで、幸福論と人間讃歌を歌い上げていく。性を題材にしたドラマの定本ともいえる内容。

嬢と客の掛け合いがノンフィクション性豊かに描写されており、利用客の男性もまた表と裏の顔を持っているところが醍醐味となる。利用客の役柄で高いネームバリューをもつ俳優が複数登場するが、やはり下元史朗の風格が抜きん出ている。

性産業とその周辺の「あるあるネタ(?)」をショートショート集にしているような作風であり、全体的に軸がブレている印象を受けるが、主演女優・鈴木砂羽の役者力にグイグイと引っ張られる感覚は本物。「ヘア解禁直後」という時代背景も念頭に置くべし。
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